月別アーカイブ: 2017年5月

天から香水をまいたような高貴な香り!柑橘の花の香りをモイストポプリで閉じ込める

5月は、新茶の季節、薫風の季節、そしてもう一つ、柑橘の花の季節です。

松尾芭蕉の俳句に、駿河路や花橘も茶の匂ひ(するがじや はなたちばなも ちゃのにおい)という句があります。

確かに、静岡は香り高い橘の花までもお茶の匂いがするくらい製茶が盛んではありますが、橘の花の香りも相当なものです。

柑橘の花は、とても高貴で甘い香りがします。

柑橘の花の写真

柑橘の花

庭では、ウンシュウミカン、アマナツ、ユズ、ハッサクなどの柑橘類の花が楽しめますが、それぞれ少しずつ香りが違います。

レモンの花は、色も少し違い、花の外側が赤紫色です。

レモンの花の写真

レモンの花

庭で咲く花のうち、柑橘の花と同じくらい香りが印象的なのが、キンモクセイとロウバイです。

キンモクセイの花の写真

キンモクセイの花

ロウバイの花の写真

ロウバイの花

キンモクセイは9月末から10月初めに、ロウバイは1月中旬に咲きます。

どちらも甘い香りですが、キンモクセイの香りはふとした瞬間にふわっとやってくる感じ、ロウバイの香りは冷たい空気の中をどこからか漂ってくる感じです。

しかし、柑橘の花の香りは、やってくるというより、降ってくるという感じです。

柑橘の花の写真

柑橘の花

根角博久(2002)『NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 柑橘類』NHK出版. の5月の章に、柑橘の花について、「天から香水をまいたかのように、高貴な香りが一面に漂います。」という一節がありますが、まさにこの通りです。

柑橘類の果実の香りはなじみがあると思いますが、柑橘類の花の香りは嗅いだことがない方もいらっしゃるかもしれません。果実のような爽やかでみずみずしいリフレッシュ系の香りではありません。かぐわしいとはこういうことなのか!?という香りです!

柑橘の花の写真

柑橘の花

この香りを閉じ込めたくて、モイストポプリにしています

モイストポプリは、塩の防腐効果を利用して、花を乾燥させずにポプリにしたものです。

香りを閉じ込めるには、無水エタノールを使って香水にしたり、ホホバオイルを使って香油にしたり、蜜蝋を使って練り香水にしたり、植物を乾燥させてドライポプリにしたりといった方法があります。

しかし、私の場合、体や物や空間に香りをつけたいわけではなく、必要な時に香りを嗅ぎたいという目的なので、一番作るのが簡単で香りが長持ちするモイストポプリにしています。

モイストポプリ

<材料>

  • 粗塩
  • ガラス瓶(塩で錆びるので、蓋は金属ではないほうがよいようです。)

<作り方>

  1. 花を摘みます。
  2. ゴミを取りのぞきます。
  3. 花が濡れている場合は乾かします。
  4. 花と粗塩を、層になるように交互に入れます。
  5. 蓋をして一か月ほど寝かせます。

香りを楽しみたいときにガラス瓶の蓋を開けて嗅ぎます。

モイストポプリの写真

時間が経つと花は変色しますが、作りたては、花の色と塩の白のコントラストがきれいです。モイストポプリは花を乾燥させずに作るので、乾燥させると香りがなくなる種類の花に適しています。

モイストポプリの写真

瓶に詰めても十分いい香りではありますが、やはり、天から降ってきてこその香りです。

柑橘の花の香りを嗅いだことのない方は、機会があったらぜひ5月のみかん畑に行ってみてください!

おすすめの本

根角博久(2002)『NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 柑橘類』NHK出版.

極上の味!八十八夜に庭のチャの木で茶摘みをして煎茶を作って飲む

吹流しを設置。新緑の間を吹き抜ける初夏の風、薫風を楽しむ

ポニョの宗介の船がほしい!ポンポン蒸気船を作って、湖で走らせる

今回の庭ノートは、ポンポン蒸気船を作って、湖で走らせたお話です。

宮崎駿監督の映画「崖の上のポニョ」に出てきた「宗介のポンポン船」がほしいと思っていたのですが、そのうち購入しようと放置していたところ、プレミアがついて、どんどん値が上がり、とんでもない金額になってしまいました(2017年5月の時点で45,000円~180,436円)。思ったときに買っておけばよかったと後悔しました。

ポンポン船は、蒸気の力で「ポンポン」と音を立てながら水面を進む船です。

ブリキのおもちゃや科学実験キットとして販売もされていますが、同じ原理の船を自分で作ってみることにしました。

どうやって作ろうかと考えていたところ、父が「ポンポン蒸気船の作り方」の切り抜きを持っていることが判明。科学雑誌『Newton』の表紙裏に、日本ガイシの「家庭でできる科学実験シリーズ」というのが掲載されていますが、2002年9月号のテーマが「ポンポン蒸気船をつくろう!」だったのです。

15年前の切り抜きです!まさか使う日が来るとは!そして切り抜いたことを覚えていたとは!

この切り抜きを参考に、少しカスタマイズしてポンポン蒸気船を作りました。

ちなみに、『Newton』の表紙裏に乗っている「家庭でできる科学実験シリーズ」は、日本ガイシのホームページでも紹介されています。ポンポン蒸気船の作り方も詳しく載っています。

日本ガイシ 家庭でできる科学実験シリーズ ポンポン蒸気船をつくろう!

このポンポン蒸気船は、ボイラーと、ボイラーから伸びる2本のパイプでできていて、水を入れたボイラーを加熱すると、船が動くという仕組みです。

ボイラーの水が加熱されて蒸気になると、体積は約1700倍に膨張するそうです。急激に体積がふくらんだボイラーの蒸気は、パイプの中の水を勢いよく外へ押し出し、これが船の推進力になります。水を押し出して圧力が下がると、外の水がパイプからボイラーへ吸い込まれ、その水が加熱されて再び蒸気になって進みます。

ポンポン蒸気船を作るのに必要なものは、バルサ材、銅パイプ、アルミ缶、木片、竹ぐし、鍋料理用固形燃料、単1乾電池、はさみ、定規、カッターナイフ、のこぎり、彫刻刀、コンパス、木工用接着剤、紙やすり、輪ゴム、マッチ、スポイト、軍手です。

バルサ材を船の形に加工し、丸い穴をあけてアルミ缶をはめ込み、銅パイプを曲げてボイラー部分を作り、舵を取りつけたらできあがりです。

ポンポン蒸気船の写真

ポンポン蒸気船

いよいよ進水式です!

固形燃料をアルミ缶の中に入れ、銅パイプにスポイトで水を入れます。船を水に浮かべて固形燃料に火をつけます。しばらくすると、ボイラー部分の水が沸騰し、船が動き出します。

シンクに水を張って実験しましたが、狭くてすぐに追突してしまいました。

シンクに浮かぶポンポン蒸気船の写真

シンクに浮かぶポンポン蒸気船

もっと広い場所で実験をと思い、側溝に水をためて水路にしました!

側溝に浮かぶポンポン蒸気船

側溝に浮かぶポンポン蒸気船

船の大きさにぴったりの水路でした。

しかし、もっと壮大な場所で実験したいと思い、船を持って湖に行くことにしました!

早速実験です。

湖に浮かぶポンポン蒸気船の写真

湖に浮かぶポンポン蒸気船

火力が少し弱かったのか、大自然を前に推進力が足りず、残念ながらなかなか思うように進みませんでした。しかし、こちらの動画を見ていただけば、パイプの先からボコッボコッと蒸気が吹き出て、それによって船が推進していることがわかると思います。

湖を進むポンポン蒸気船の動画 (15秒、6MB)

快走ではありませんでしたが、蒸気機関とはこういうものなのかと体感することができ、大満足でした!

ついでに作ったソーラー船も湖に浮かべてみました。

バルサ材の上にソーラーパネルをとりつけ、太陽光でプロペラを回して進みます。

ソーラー船の写真

ソーラー船

こちらはなかなかの推進力でした!曇っているのに、太陽光とはすごいものです。

湖を進むソーラー船の写真

湖を進むソーラー船

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吹流しを設置。新緑の間を吹き抜ける初夏の風、薫風を楽しむ

今回の庭ノートは、若葉の間を吹き抜けて初夏の香りを運ぶ南風、「薫風(くんぷう)」のお話です。

私は年間4つ、心待ちにしている風があります。春一番薫風二百十日の風、そして木枯らしです。

春一番は立春から春分の間にその年に初めて吹く南寄りの強い風、薫風は新緑の間を吹きぬける初夏のさわやかな風、二百十日の風は立春から数えて210日目の台風がよく来る厄日の風、木枯らしは太平洋側地域で晩秋から初冬の間に吹く北よりの強く冷たい風、です。

庭に吹く春一番については、2017年3月5日の記事で紹介しました。

精悍な北風とチャラい南風。春一番と寒の戻りの風

5月に入り、今度は待ちに待った薫風が吹きました。

「薫風自南來 殿閣生微涼(くんぷうみなみよりきたり、でんかくびりょうをしょうず)」という禅語があります。

南から薫風が吹き、殿閣を涼しい空間にする、という意味ですが、この句を禅の世界で考えると、煩悩妄想を消し、分別執着の汚れを洗い流した、清涼そのもの=悟りの境地、を表現したものになるということです。

「薫風」の語源はこのように漢語ですが、訓読みして和語化して「風薫る」と言ったりもします。

「薫風自南來」の言葉のとおり、薫風は本当に南から来ます。

私は五色の吹流しを揚げて薫風を楽しんでいます。端午の節句とは関係なく、薫風を楽しむために揚げています。長さ1メートルの小さな吹流しで、薫風が当たるベランダのコーナーの手すりにつけています。吹流しを気持ちよく泳がせることができるのは、薫風だけのような気がします。

吹流しの写真

もう一つの楽しみ方は、お気に入りの木の北側に立って薫風を楽しむというものです。どの木を通ってくるかで、薫風の印象が少し違います。

私が一番気に入っているのは、モミジを吹き抜ける薫風と、ケヤキを吹き抜ける薫風です。

モミジを吹き抜ける薫風の写真

モミジを吹き抜ける薫風

ケヤキを吹き抜ける薫風の写真

ケヤキを吹き抜ける薫風

写真では全然分からないですよね。

動画を撮ったのですが、風の温度や湿度や雰囲気が伝わらなく、薫風の良さが全く出ていなかったので、写真だけにしました。

とても爽やかで、南から、さーっとやって来て、ふわっと上に抜ける感じです。モミジを吹き抜ける薫風のほうが、ケヤキを吹き抜ける薫風より、やや繊細な感じです。

同じ南風でも、春一番のような荒々しさや湿っぽさ、チャラい感じがありません。秋や冬の風のようなストイックさや切なさもありません。チャラすぎずストイックすぎず、年間で吹く風の中で、一番健全な感じがします。極めて個人的な印象になりますが、キャラとしては、外連味のない静岡県民みたいな感じです。

 

おすすめの本・グッズ

高橋順子(2002)『風の名前』小学館.

四季折々の美しい風の名前が載っています。風の作用やイメージを写した静止画なのに、どの写真からも風そのものを感じます。

平田精耕(1988)『禅語事典』PHP.

250の禅語の有名なことばが載っています。それぞれに解説と寸話がついています。Kindle版も出ています。

こいのぼり 五色吹流し 単品 1M 【徳永こいのぼり】

こいのぼりや五色の吹流しが一匹単位で手に入ります。長さもいろいろあります。

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ついに来た!七色の美しい鳴き声を持つ、セミの鳴きまねもできるガビチョウ(画眉鳥)

今回の庭ノートは、「ガビチョウ(画眉鳥)」が、ついに私の庭にも来たお話です!

まずは、この鳴き声をお聞きください。

ガビチョウ(画眉鳥)の鳴き声

5月に入ってから、毎朝5時にこの声で起こされています。

非常に美しい声なのですが、ほかの鳥と違ってかなりよく通る大きな声で、一度鳴き始めたら休憩することなく何分間も延々と鳴き続けます。

鳥のさえずりで目覚めるなんて幸せなことですが、ガビチョウの場合、「何!?何が起きたの!?」という感じで、若干起こされた感があります。

初めて聞く鳴き声だったので最初は何の鳥かわからず、「いったい何者なんだ!?」と思っていました。飛び立つ姿が見えたので野鳥図鑑で調べてみましたが、なかなか特定できません。鳴き声から特定しようと思いましたが、多彩すぎて調べようがありません。ついに顔を目撃して、ガビチョウと判明した次第です。

ガビチョウの写真

ガビチョウは、スズメ目チメドリ科に分類される、体長22~25センチくらいの鳥です。色は茶褐色でくちばしが黄色、目の周りとその後方に眉状に伸びた白い模様があるのが特徴です。京劇メイクのアイラインみたいです。

ガビチョウは中国南部から東南アジア北部にかけて生息していますが、日本ではペットとして輸入された個体が、かご脱けにより定着したそうです。特定外来生物に指定されているため、日本の野鳥図鑑には載っていないことが多いです。

七色と形容されるその美しい鳴き声から、中国では非常にポピュラーな飼い鳥で、日本でも古くから輸入されていたそうですが、人気がなくなってペットショップの店頭から姿を消したそうです。

日本では関東地方から分布を広げてきたようで、静岡県富士宮市にもいるという話は聞いていたのですが、私の家の周辺で見かけることはありませんでした。なので、ついに我が家に来た!という感じです。

ガビチョウの写真

ガビチョウは声がいいだけではなく、ほかの鳥の鳴きまねも上手で、ウグイス、キビタキ、オオルリ、サンコウチョウ、シジュウカラといった鳥のさえずりをまねるそうです。

ガビチョウ

私が目撃した時には、コジュケイのまねもしていました。

コジュケイのまねをしていると思われるガビチョウの動画(movファイル)

さらに、セミのツクツクボウシのまねもしていました!

ツクツクボウシのまねをしていると思われるガビチョウの動画(movファイル)

なんでセミ!?と思いますが、自分の歌のレパートリーを増やすためという説があるようです。

オスは鳴き声の優劣を競ってメスにアピールしますが、自分の歌のレパートリーが豊富ということは、それを維持できるだけの余裕があることの証明になり、そのため、ほかの生き物の鳴き声などを積極的に取り入れようとする傾向があるそうです。

あるいは、仲間とより良い関係を構築するためにレパートリーを増やしているのかもしれません。

ツクツクボウシだけでなく、ぜひ、ヒグラシのまねも習得してほしいです。

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ありえない質感!美しすぎる白い花、私の庭の四大美女

今回の庭ノートは、庭に咲く、美しすぎる白い花についてです。

私の庭には、ツツジ、シャクナゲ、コデマリ、オルレア、シャクヤク、カサブランカなど、美しい白い花がたくさん咲きます。

カサブランカの写真

カサブランカ

ほかの色の花もそれぞれ素敵ですが、白い花は特別美人が多いような気がします。

その中でも、二度見するほど美しい、私にとって特別な花があり、中国四大美女にならって、私の庭の四大美女と呼んでいます。

ちなみに、中国四大美女とは、西施王昭君貂蝉楊貴妃の四人です。

西施(春秋時代):彼女が川で洗濯をする姿に見とれて魚たちは泳ぐのを忘れてしまったと言われる沈魚美人

王昭君(漢):琵琶をかき鳴らす彼女の姿と悲しい調べに魅入られて雁が次々に落ちてきたと言われる落雁美人

貂蝉(後漢):天下を憂いて物思いに耽る姿のあまりの美しさに、月が恥じて雲に隠れてしまったと言われる閉月美人

楊貴妃(唐):彼女が後宮を散歩すると庭の花が妃の美貌と体から発する芳香に気圧されてしぼんでしまったと言われる羞花美人

「虞や虞や 汝を奈何せん」の虞美人(秦末)が入っていない!?と思いますが、三国志で有名な貂蝉を抜いて虞美人を入れることもあるそうです。

魚が泳ぐのを忘れたり、雁が落ちてきたリ、月が隠れたり、花がしぼんだり、って、すごすぎです。

でも、私の庭に咲く白い花も負けていません!この世のものとは思えない美貌です。

ありえない質感なのですが、私の写真技術ではそれがお伝えできないのが残念です。本物を見れば、絶対触りたくなります!

クチナシ

クチナシの写真

クチナシ

この人、どうしたらいいんでしょう!ため息しか出ないです。花びらが外側にカールした感じが絶妙です。初夏の嵐の前のちょっと薄暗い不安な日がよく似合います。

フヨウ

フヨウの写真

フヨウ

何なんですか、この透け感!花の中央のほんのり黄緑がかった色合いも絶妙です。花びらと花びらの重なり方も計算しつくされていて、回転してそのまま吸い込まれる感じです。

シュウメイギク

シュウメイギクの写真

シュウメイギク

可憐すぎます!肉厚な花びらと、あえて花びらの形が一枚一枚違うところが絶妙です。計算ずくの不揃い!?よく見るとパールが入っていてキラキラ光っています。

ツバキ

ツバキの写真

ツバキ

このなめらかさ、何なんでしょう!品種がわからないのですが、ほかのツバキにはない質感です。一枚一枚の花びらが繊細でしっとりしているにもかかわらず、ありえない枚数重なっていて、贅沢仕様です。

ご紹介した私の庭の四大美女の写真、ベストショットではないので、もっといい写真が撮れたら、随時差し替えようと思います。

極上の味!八十八夜に庭のチャの木で茶摘みをして煎茶を作って飲む

今回の庭ノートは、八十八夜に庭のチャの木で茶摘みをして、電子レンジとホットプレートで蒸し製煎茶を作ったら、とてつもなくおいしかったというお話です。

静岡県は、全国の茶園面積、収穫量の40%を占める、日本一の茶どころです。同じ静岡県内でも、富士・沼津、清水、本山、牧之原、川根、掛川、天竜と、地区によって製法や味にそれぞれ違いがあり、さまざまな高品質の日本茶を楽しむことができます。

富士山と茶畑の写真

私は静岡県に住んでいるため、身近にすばらしいお茶屋さんがたくさんあり、プロが作った最高においしいお茶を毎日飲んでいます。

しかし、庭にチャの木が2本あり、いったいどんな味がするのだろうと気になったので、八十八夜に自分で茶摘みをし、自家製のお茶(蒸し製煎茶)を作って飲んでみることにしました。

八十八夜は立春から数えて88日目ということです。2017年の八十八夜は5月2日です。このころは、新茶の摘みとりの時期で、八十八夜に摘んだ新茶を飲むと長生きをすると言われています。

庭のチャの木は垣根を兼ねた庭木として植えられているため、茶園でおなじみのかまぼこ型ではありません。樹高1メートルくらいの普通の木です。

一芯二葉(新芽の真ん中の芽と葉2枚)を手で摘みます。

一芯二葉の写真

生葉100gを摘みました。

チャの生葉の写真

緑茶、ウーロン茶、紅茶は、同じチャの木の葉から作られます。違いは、チャの葉を発酵させるかどうかです。全く発酵させないと緑茶、50%程度発酵させるとウーロン茶、100%発酵させると紅茶になります。

チャの生葉には酵素が含まれていて、そのままにしておくとどんどん酸化して茶色くなります。緑茶の場合、摘んだらできるだけ早く熱を加えて、酸化を止めます。これを殺青といいます。

殺青には蒸す方法と炒る方法があります。日本のほとんどのお茶は、蒸し製煎茶です。蒸気で茶葉の酵素を殺青し、もみながら乾燥して、最終的に細くもんで針状のお茶に仕上げます。これに対して、中国式の製法である釜炒り茶は表面温度300℃くらいの釜で炒って殺青します。

今回は蒸し製煎茶を作ってみることにしました。

作り方は下記の本を参考にしました。

増澤武雄(編集)、山福朱実(イラスト)(2007)『茶の絵本』農文協.

緑茶の製造工程は、大きく、殺青→揉捻→乾燥に分けられます。さらに細かい製造工程に分けられ、手揉みには非常に高度な技術が必要ですが、家庭で楽しむには、とりあえず蒸して揉んで乾燥すればいいということになります。

①殺青

チャの生葉にラップをかけて、1分30秒くらい電子レンジにかけて蒸します。

チャの生葉を電子レンジで蒸す写真

敷物の上で冷まします。

蒸した生葉の写真

120℃のホットプレートで、よく混ぜながら蒸し露と茶葉の水分の一部を飛ばします。

揉捻の写真

②揉捻

敷物の上で茶葉を揉んでは100℃~120℃のホットプレートで水分を飛ばす、を繰り返します。

軽く揉みながら乾燥

揉捻の写真

強く揉みながら乾燥

揉捻の写真

形を整えて揉みきり

揉捻の写真

③乾燥

100℃~120℃に調節したホットプレートでに和紙を敷き、茶葉を薄く広げて乾かします。

茶葉の乾燥の写真

出来上がり

揉みきりが難しく、針のようなまっすぐな形には仕上がりませんでしたので、蒸し製玉緑茶みたいな感じになりました。

茶摘みから完成まで、2時間半くらいでした。100gの生葉から25gのお茶ができました。

さっそく試飲です。

茶葉1人3g、よく沸騰させて70℃に冷ましたお湯1人60mlで、浸出時間は2分にしました。

一煎目の写真

一煎目

普通にお茶です!というより、その辺のおいしくないお茶よりおいしいというか、その辺のおいしいお茶よりおいしいです!

もっと草っぽい野性味あふれる味だと思っていたので驚きでした。自家製のお茶というものは、いい意味で「田舎のお茶」という味がしますが、田舎っぽさもなく、スノッブさもなく、何ともバランスがとれたお茶でした。

香りもよく、生臭くも焦げ臭くもありません。色もしっかり出ていますが濁りがなく美しいです。味は、まろやかであまく、玉露のようなヌメリが若干あり、ほんの少し渋みがあって、にもかかわらず爽やかです。味がしっかり出ているのにしつこくないです。新茶ならではのやさしさもあります。何より、雑味がなく、生粋のお茶という感じです。

一煎目は新茶のまろやかさが、二煎目は新茶のさわやかさが際立ちました。

二煎目の写真

二煎目

なんかすごい自画自賛になってしまいました。

技術がないのにおいしくできた秘訣は、機械ではなく手摘み手揉みでやったこと、短時間で茶摘みから飲むところまでを一気にやったこと、八十八夜にやったこと、一人で雑念なしでやったこと、庭のチャの木に対してリスペクトの心があったこと、かなと思っています。

おすすめの本

増澤武雄(編集)、山福朱実(イラスト)(2007)『茶の絵本』農文協.

農文協のつくってあそぼうシリーズはすばらしいです。茶の起源や歴史、種類などが、わかりやすくまとめられています。蒸し製煎茶のほかにも、釜炒り茶、包種茶、紅茶の作り方も載っています。

天から香水をまいたような高貴な香り!柑橘の花の香りをモイストポプリで閉じ込める