投稿者「田中安良里」のアーカイブ

フランス イヴォワールの「五感の庭」その2(Le Jardin des Cinq Sens – Yvoire)

今回の庭ノートは、フランスイヴォワールにある「五感の庭(Le Jardin des Cinq Sens」に行ったお話で、前回の続きです。

前回の記事: フランス イヴォワールの「五感の庭」その1

「五感の庭」の10区画を順番にみていきます。

1.Prairie alpine(高山草原)

高山植物が植えられている区画ですが、下の写真の岩は氷河漂礫(氷河によって運ばれてきた岩)だそうです!我が家で応用するなら、富士山の溶岩を置いてコケモモを植える、でしょうか!?

Prairie alpine (高山草原)の写真

Prairie alpine (高山草原)

2.Sous-bois(下草)

木の下の日陰に、およそ50種類のシダが植えられています。きっと珍しい品種もあったのだと思いますが、シダ類は、温帯・亜熱帯で水が豊富にある日本では見慣れた存在であるため、何となくさらっと通ってしまいました。

Sous-bois(下草)の写真

Sous-bois(下草)

3.Tissage(織物)

ルネッサンスのタペストリーに触発された庭だそうです。チェス盤のように区切られた中に、人間と関係の深い2種類の植物、白いオールドローズオート麦が植えられています。人間と植物との古くからのつながりについて思いを巡らせる、メッセージ性の強い庭です。

Tissage(織物)の写真

Tissage(織物)

4.Cloître(修道院)

この庭、ほしいです!

修道院の庭は私の憧れの庭です。私にとって修道院の庭とは、回廊に囲われて、中央に噴水井戸があって、きちんと区画整理された中に野菜薬草が植えられていて、ところどころにベンチがあり、瞑想ができるようになっていて、場合によってはブドウ園があってワインを作っていて、さらにさらに場合によってはを飼っていてバターを作っているところです。

「五感の庭」のこの区画には薬草のみが植えられていました。効用によって植物がまとめられていましたが、個人的な理由で、腸に効く薬草が気になりました。

Cloître(修道院)の写真

Cloître(修道院)

5.Le jardin du goût(味覚の庭)

食べられる植物をで楽しむ味覚の庭です。

残念ながら勝手に採って食べてたりすることはできず、食べられる植物について目で学びます。

Le jardin du goût(味覚の庭)の写真

Le jardin du goût(味覚の庭)

6.Le jardin de l’odorat(嗅覚の庭)

香りのよい植物をで楽しむ嗅覚の庭です。

私の庭にも、パイナップルセージ、オレンジミント、ローズゼラニウムなどを植えていますが、ここには、コーラ、ゴム、カレーなどの香りがするおもしろい植物がありました。

Le jardin de l'odorat(嗅覚の庭)  の写真

Le jardin de l’odorat(嗅覚の庭)

7.Le jardin du toucher(触覚の庭)

おもしろい手触りの植物をで楽しむ触覚の庭です。

私の庭にも、ラムズイヤーやラグラスなど、もふもふ系の植物を植えていますが、この庭はチクチク系の植物もたくさんありました。手触りがいいものだけを集めないところがすばらしいです!

Le jardin du toucher(触覚の庭)の写真

Le jardin du toucher(触覚の庭)

8.Le jardin de la vue(視覚の庭)

色合いの美しい植物をで楽しむ視覚の庭です。

同じピンク系の花でも色合いが微妙に違い、ピンクって何種類あるんだろうと思わせる庭でした。視覚の庭が一番作るのが難しかったのではないかと思います。

Le jardin de la vue(視覚の庭)  の写真

Le jardin de la vue(視覚の庭)

9.Le jardin de l’ouïe(聴覚の庭)

噴水の水の音や鳥のさえずり、風の音をで楽しむ聴覚の庭です。

噴水と水辺の植物がありますが、フェンスで囲まれていて中に入れないようになっています。鳥は上から入れます。目を閉じて、水や風や鳥の音に耳を澄ませます。

Le jardin de l'ouïe(聴覚の庭)の写真

Le jardin de l’ouïe(聴覚の庭)

 

人の声が気になりますが、人もまた自然の産物です!

10.Bordures(縁)

敷地の縁にあり、通り道でもありますが、とても落ち着いた場所です。

Bordures(縁)の写真

Bordures(縁)

ベンチに座っていていたら、もふもふの烏骨鶏!?が生垣から出てきました!

烏骨鶏!?の写真

烏骨鶏!?

ボーダーガーデンの隅には、おしゃれな鳥の家もあります。

鳥の家の写真

鳥の家

感じたこと

視覚に訴える華やかな庭が好きな方にとっては、ぱっとしない印象かもしれません。しかし、五感重視、コンセプト重視の私にとっては、とても勉強になり、心温まるすばらしい庭でした!

この五感へのこだわりは、さすがフランスです!私の庭にも取り入れたいアイディアがたくさんありました!

一方で、日本の自然の多彩さにも改めて気づきました。五感を使って自らアプローチしなくても、庭にただいるだけで五感を刺激するものが向こうからやってくるのです。

あらゆる種類の雨や風、時には台風、鳥だけではなくセミなどの虫の鳴き声、とんでもないスピードで成長する植物、何種類あるかわからない緑色、どこからともなくやってくる花の香りや実の香り、その辺に生えている薬味の味。

耳を澄まさなくても、鼻を近づけなくても、目で違いを見極めなくても、いろいろなものが向こうから勝手にやってきます。ありがたい環境ですが、情報量が多すぎて五感がマヒすることがあるようにも思います。時には一つの感覚だけに集中すると新しい発見があるかもしれないと思いました。

フランス イヴォワールの「五感の庭」その1(Le Jardin des Cinq Sens – Yvoire)

フランス イヴォワールの「五感の庭」その1(Le Jardin des Cinq Sens – Yvoire)

今回の庭ノートは、フランスイヴォワールにある「五感の庭」に行ったお話です。

イヴォワール(YVOIRE)はレマン湖畔にあるフランスの村で、フランスの最も美し村Les Plus Beaux Villages de France)の一つです。

木のバルコニーを持つ石造りの家々が並び、バルコニーには色鮮やかな花が咲き誇ります。お店にはデザイン性の高いすてきな看板がぶるさがり、歩いているだけで楽しい村です。

イヴォワールの写真

イヴォワール

私の目的地は、イヴォワール城のとなりにある「五感の庭」です。

中世の四角い主塔を持つイヴォワール城は、17世紀以来イヴォワール男爵の居城で、内部は見学できません。

イヴォワール城の写真

イヴォワール城

しかし、となりにある「五感の庭(Le Jardin des Cinq Sens」は一般公開されて います。

五感の庭の写真

五感の庭

庭の名前の通り、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感で体験できるつくりになっています。

庭のコンセプトや美しい写真は、五感の庭(Le Jardin des Cinq Sens)のホームページに載っていて、庭の360°パノラマビューもありますので、ここでは私が「おおっ!」と思ったこと、自分の庭に応用したいと思ったことについてお話します。

まず、庭の広さが絶妙です。決して狭くはないのですが、広すぎもせず、1時間あれば十分見て回れます。しかし、五感を使って一つ一つの植物と丁寧に向き合っていたら、1日中いられます。庭は広ければいいというものではないことを改めて実感しました。

庭は10区画に仕切られていて、それぞれの区画は、シデの生垣リンゴの棚で囲われています。

囲う」のは庭の鉄則です。そもそもガーデンとはGar(=囲む)Eden(=エデン・楽園)です。徹底的に囲って外界をシャットアウトし、非日常空間を演出する手法はディズニーランドでも用いられています。

迷路のようで、向こう側に何があるのかワクワクします。

シデの生垣の写真

シデの生垣

それに、リンゴの実が木になっている姿は、ミカンが特産の温暖な静岡県出身の私にとって非常に珍しい光景で、これだけでテンションが上がります。「リンゴって木になっているんですか!?」状態です。

リンゴの棚の写真

リンゴの棚

次に、庭の10区画を順番にみていきたいと思います。

フランス イヴォワールの「五感の庭」その2

フランス イヴォワールの「五感の庭」その2(Le Jardin des Cinq Sens – Yvoire)

野菜っぽいのにオシャレ!スイスの庭でサトイモの葉っぱの力を見直す

夏のスイスの庭で、サトイモを発見!

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物の写真

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物

正確にはコロカシア(=サトイモ科の多年草。食用のサトイモもこの仲間。)と言うべきでしょうか。

サトイモ科の種類についてあまり詳しくないので、これが一体何という名前なのかわからないのですが、私には「八つ頭」にしか見えません!

さらに一歩引いて見ると、サトイモ in ヨーロッパという感じです!

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物の写真

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物

サトイモは、水盤で栽培するグリーンインテリアとしても利用されていますし、都会の人にとっては違和感ない光景かもしれませんが、田舎で育った私にとっては、花壇に野菜が混じっているようにしか見えません!

私にとって、サトイモのあるべき姿とは、畑に並ぶこの姿なのです!

我が家の家庭菜園のサトイモの写真

我が家の家庭菜園のサトイモ

たくましくて、かわいいです!

もしサトイモ科の植物を観賞用に使うとしたら、アンスリウムやアローカシア・アマゾニカやモンステラくらいまでいかないと、オシャレな夏の雰囲気は出ないと思っていました。

例えば、夏に東京ディズニーランドに行ったときに見つけたこんな植え込みみたいにです。

東京ディズニーランドに植えてあったアローカシア・アマゾニカやアンスリウムの写真

東京ディズニーランドに植えてあったアローカシア・アマゾニカやアンスリウム

東京ディズニーランドに植えてあったモンステラの写真

東京ディズニーランドに植えてあったモンステラ

しかし、目が慣れてくると、なんでしょう、このスイスのサトイモ、なんかすごくシックです!

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物の写真

スイスの庭に植えられたサトイモ科の植物

夏の雰囲気、南の雰囲気なのに、やりすぎていなくて、気品が漂っています。

ここにモンステラやアローカシア・アマゾニカを持ってきたら、きっと南に行きすぎなのです!

「サトイモの葉っぱの上の雫がきれい」なんてたまに言ってはいますが、結局はその地下にある「里芋」しか見ていなかったと反省しました。

サトイモの地上部の底力を思い知りました。

【号外】オシャレすぎる!フランスの電車(SNCF)のカラフルな座席

パリ在住歴15年の私のピアノの先生が、2017年8月30日の庭ノートの記事「勇気をもって椅子の色をバラバラに!ジュネーブのペルル・デュ・ラック公園」を読んでくださり、「全く同感です!」と、こんなステキな写真を送ってくださいました!

フランスの電車(SNCF)のカラフルな座席です!

フランスの電車(SNCF)のカラフルな座席の写真

フランスの電車(SNCF)のカラフルな座席

そうなんです!これなんです!!

同系色のグラデーションとかじゃなくて、この、あえてバラバラのオシャレ感!

さすがフランスの色彩感覚です!

勇気をもって椅子の色をバラバラに!ジュネーブのペルル・デュ・ラック公園

勇気をもって椅子の色をバラバラに!ジュネーブのペルル・デュ・ラック公園

今回の庭ノートは、ジュネーブのペルル・デュ・ラック公園についてです。

ジュネーブはスイスの西部、レマン湖の南西岸にある都市で、フランス語圏に属し、国連ヨーロッパ本部、国際赤十字など、さまざまな国際機関が置かれている街です。

ペルル・デュ・ラック公園(Parc de La Perle du Lac)は、レマン湖の湖畔にあります。モンブランが望める美しい庭に加え、おいしいレストラン(Restaurant La Perle Du Lac)や品のいい科学史博物館(Musée d’histoire des sciences)まである素敵な公園です。

その科学史博物館の隣の広場に、フランスのフェルモブ社(Fermob)のビストロシリーズのガーデンファニチャーが置いてあったのですが、あえて色が全部バラバラで、すごくおしゃれだったのです!

オレンジ黄緑のテーブルやチェアーをランダムに置くなんて、私にはありえない組み合わせです。

ジュネーブの科学史博物館の隣の広場の写真

ジュネーブの科学史博物館の隣の広場

フェルモブ社のビストロシリーズのテーブルとチェアーは私のお気に入りのガーデンファニチャーです。スチール製でプラスチックのように劣化せず、折りたたんでコンパクトに収納できます。

私も自分の庭で、庭仕事の休憩の時に使っています。私が使っているのはです。

庭で使っているフェルモブ社のガーデンファニチャーの写真

庭で使っているフェルモブ社のガーデンファニチャー

フェルモブ社のガーデンチェアーはいろいろなところで見かけますが、パリのチュイルリー公園リュクサンブール公園のガーデンチェアーもグリーン系で統一されていますし、カフェでもならすべてで統一されていることが多いと思います。

バラバラの色でそろえているのは写真でしか見たことがなかったため、「本当にやっている人がいる!」と軽い衝撃を受けました。

日本のように風景がごちゃごちゃしていないので、このバラバラの配色がとてもよく合っていました。

ペルル・デュ・ラック公園の中には、「真珠の庭(Le Jardin de La Perle)」と呼ばれる庭があります。レマン湖に向かって緩やかな傾斜になっていて、花と芝生がきれいです。

晴れた日には、レマン湖のはるか向こうにモンブランが見えます。芝生に座って、モンブランとレマン湖を行き交う船を眺めることができます。

こちらも植物の配色が絶妙で、さらに春と夏では雰囲気が全く違います。

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭から見たレマン湖とモンブラン (春)の写真

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭から見たレマン湖とモンブラン (春)

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭(春)の写真

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭(春)

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭から見たレマン湖(夏)の写真

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭から見たレマン湖(夏)

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭(夏)の写真

ペルル・デュ・ラック公園の真珠の庭(夏)

春はピンクと赤、夏は黄色が基調になっていて、どちらも差し色の白が効いていて、葉の形や質感が異なる植物が組み合わさり、とても洗練された雰囲気です。

私は配色センスがなく、色が多いと疲れるので、どうしても無印良品みたいなことになってしまいます。もう少し自分の庭がカラフルになるように努力してもいいなと思いました。

【号外】オシャレすぎる!フランスの電車(SNCF)のカラフルな座席

今年も出没!家の守り神、ヤモリ(家守)

私の庭というか家にはヤモリが住み着いていて、毎年夏になると出没します。

たいてい、家の窓ガラスの外側にこのようなかたちで張り付いているのに出くわします。

ヤモリの写真

近くで見るとこんな感じで、おなか丸見えです。

ヤモリの写真

私は爬虫類はあまり好きではありませんが、ヤモリだけは特別で、見つけると、四つ葉のクローバーを見つけたときのようなハッピーな気持ちになります

ヤモリは漢字で「家守」や「守宮」ですが、その字の通り、家を守ってくれる縁起の良い生き物とされています。

ヤモリは、民家やその周辺で生息しています。日本では原生林などには生息していないため、郊外よりもむしろ都市部のほうがよく出会えるのかもしれません。

ヤモリは夜行性で、生きた虫を食べます。家にとって害になる虫を食べてくれるので、ありがたい生き物です。

昔は、夜に行灯などの灯りを灯せるのはお金持ちの家だけだったため、その光に集まる虫を食べにくるヤモリが居つくのはお金持ちの家でした。そのようなわけで、灯りがあるところに現れるヤモリは富の象徴だったそうです。今でも家が繁盛する守り神とされています。

我が家で暮らしているヤモリは一匹だけではありません。

ヤモリの写真

ごくまれに家の中の壁で遭遇し、そんな時はさすがにヒヤッとしますが、ほとんどは家と庭の境で生活しています。

ヤモリの写真

特に、手と、張り付いている手足の角度がかわいいです。

爬虫類が苦手な人にとっては、こんなのに家の周りをうろうろされたらたまったものではないかもしれませんが、縁起の良い、家の守り神です。我が家に出没してくれるのはとてもラッキーなことだと思い、大切に放置しています。

蝉:小学生だった頃の記憶がよみがえる!セミの鳴き声カレンダー

静岡県にある私の庭では、夏に、ニイニイゼミ、クマゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシが鳴きます。

セミの写真

セミ

特に庭の桜の木にはセミがたくさんとまり、種田山頭火的に言ったら「何が何やらみんな鳴いている」状態です。

桜の木にとまるセミの写真

桜の木にとまるセミ

※この写真を見て「どこにセミがいるの?」と思われた方のために、最後に答えを載せておきます。

セミの種類によって鳴き声が違い、ピークを迎える時期も少しずつ違います。そのため、セミの声のグラデーションによって、今が夏のどの時期かを知ることができます。セミの声がカレンダー代わりになるわけです。

しかも、セミの鳴き声は子供の頃の記憶とリンクしています。聴覚を通した記憶とはすごいものです。

セミの鳴き声と夏の経過について、超個人的な記憶をご紹介します。

※庭で録音したセミの鳴き声も載せますが、うまく音が拾えず、かすかにしか聞こえないものもあります。

夏休み第1週:ニイニイゼミがメインで鳴く

夏休みが始まり、「夏休みの友」をありえないスピードで終わらせている。

夏休み第2週:クマゼミがメインで鳴く

夏の午前中のイメージ。ラジオ体操に行って、妹と「あさりちゃん」や「タッチ」を観ている。

夏休み第3週:アブラゼミがメインで鳴く

夏の午後のイメージ。プールに行って、ガリガリ君を食べて扇風機の前でグダグダしている。

夏休み第4週:ミンミンゼミがメインで鳴く

夏休みも佳境に入り、ミンミンゼミのせいでお盆と終戦記念日の切なさが助長される。

夏休み第5週:ツクツクボウシがメインで鳴く

夏休みが終わりに近づき、親に世話を焼かれながら自由研究や読書感想文などの大物の宿題をやっつけている。

別格のヒグラシ

夏休みを通して朝夕の涼しい時間帯に鳴く、郷愁の代名詞。記憶の中では夕立とセット。

以上が静岡県にある私の庭の「セミの鳴き声カレンダー」になりますが、あくまでも大まかな印象であって、ずいぶん早い時期からツクツクボウシが鳴くこともあります。

近年は温暖化の影響か、クマゼミの鳴き声ばかりが目立つようになり、逆にミンミンゼミが減っているような気がします。

このように、セミの鳴き声と子供の頃の記憶がリンクしているのは私だけではないようで、「ちびまる子ちゃん」のまるちゃんのように、夏休みの宿題を831日まで放置しておくようなお子様だった人は、ツクツクボウシの鳴き声を聞くと今だに焦るといいます。

桜の木にとまるセミの写真

桜の木にとまるセミ

蝉:神秘的すぎる瞬間!ありえない色!庭でセミの羽化を見る

庭のソテツの葉で、沖縄で教わったソテツの虫かごを作る

今回の庭ノートは、庭のソテツの葉で、沖縄で教わったソテツの虫かごを作ったお話です。

ソテツは、現在生きている植物の中で、イチョウと並んで最も原始的な植物の一つです。幹の頂の部分から羽状の葉を茂らせる独特な姿は南国を彷彿とさせますが、私にとっては、南国というよりジュラシックなイメージです。古風で、裸子植物特有の生命力を感じるため、お気に入りの植物の一つです。

ソテツは「蘇鉄」と書きますが、枯れかかったときに幹に鉄くぎを打ち込んだり、鉄類を根元に与えると蘇るという言い伝えに由来します。鉄で蘇るなんてかっこいいです。

日本では、よく、公園や官公庁や学校、ロータリーの真ん中などに植えられています。

静岡県にある私の庭でもソテツを地植えにしていますが、防寒対策をしなくても元気に育ってくれています。

庭のソテツの写真

庭のソテツ

葉は、多数の線状の小葉から成り、葉先は鋭く尖っていて、刺さると痛いです。

初夏に新芽が伸びてくる頃はとてもきれいで、新芽のカールがジュラシックな感じで、芸術品のようです。

ソテツの新芽の写真

ソテツの新芽

古くなって垂れ下がった葉は、付け根から切り落として樹形を整え、新しく出てくる葉と世代交代させます。

この切り落とした葉を使って、沖縄で教わったソテツの虫かごを作りました。

沖縄で作ったソテツの虫かごの写真

沖縄で作ったソテツの虫かご

ソテツの線状の葉が短いと編むのが大変なので、適当な長さがある部分を選んで、長さ20センチくらいに切ります。

気分を盛り上げるために琉球畳の上で作ります。

ソテツの葉を準備する写真

ソテツの葉を準備する

葉の最初の2本を軸にします。

ソテツの虫かごを作る写真

次の葉から編み込んでいきます。
右の葉を右側の軸の上から左側の軸の下へ、左の葉を左側の軸の上から右側の軸の下へ。この繰り返しです。ほつれないように、最初はきつめに編みます。

ソテツの虫かごを作る写真

編み続けると、軸にしていた2本の長さが足りなくなるので、別にとっておいた小葉を継ぎ足して軸にしていきます。

別にとっておいたソテツの小葉の写真

別にとっておいたソテツの小葉

ソテツの虫かごを作る写真

最後まで編み切ります。編み終わりの処理の仕方は自由だそうです。

ソテツの虫かごを作る写真

完成です。

ソテツの虫かご 表の写真

ソテツの虫かご 表

ソテツの虫かご 裏の写真

ソテツの虫かご 裏

基本的な編み方をもとに、いろいろアレンジできます。

遊びに来ていた甥っ子と一緒に作り、二人ではまってしまい、十数体作りました。

ソテツの虫かごの写真

ソテツの虫かご

葉に独特の光沢とハリがあるので、とても清潔で網目が美しいです。

ソテツの虫かごの内側の写真

ソテツの虫かごの内側

私は虫は入れずにインテリアにしています。

虫かごですが、これ自体が虫みたいです。

琉球音階のウインドチャイムを作成!沖縄の竹富の風に演奏してもらいました!

バタフライガーデン:蝶が産卵に来る植物を植える(アゲハチョウ科以外)

私は蝶が大好きで、バタフライガーデンを庭づくりの柱の一つにしています。

蝶が集まる庭を作るには、大きく二つのアプローチがあります。

  1. 成虫の食物である蜜源植物を植える
  2. 幼虫の食物である食草を植える

今回は、2の食草、特にアゲハチョウ科以外の食草についてです。

食草とは蝶が主に幼虫期に餌として食べる植物のことです。蝶の成虫が好きな蜜の多い花を植えれば蝶はやってきますが、庭に居ついてくれるようにするには、蝶が産卵し、孵化した幼虫が食べる植物を植える必要があります。

蝶は卵→幼虫→蛹→蝶完全変態をする虫です。幼虫とはイモムシのことなので、イモムシが嫌いな人は、食草を植えるというアプローチは難しいかもしれません。しかし、蜜源植物よりも来訪が多く、うまくいけば自分の庭で蝶の一生がめぐるようになります。

蝶の幼虫は、種類によって食べる食草が決まっています。例えば、アゲハ(ナミアゲハ)はミカン、サンショウ、カラタチなど、柑橘類の葉だけを食べますし、キアゲハはパセリ、ニンジン、ミツバなど、セリ科の葉だけを食べます。

私が意識的に食草を植えている、アゲハチョウ科以外の蝶を少しご紹介します。

ツマグロヒョウモンを呼ぶには

ツマグロヒョウモンはタテハチョウ科のチョウで、漢字で書くと「褄黒豹紋」です。1980年代までは近畿地方以西でしか見られなかったのが、徐々に生息域が北上し、1990年代に東海地方でも見られるようになったそうです。そして、静岡県の私の庭でもよく見かけるようになりました!

庭に来たツマグロヒョウモンの写真
庭に来たツマグロヒョウモン

幼虫はパンジーなどスミレ科の植物を食べます。

庭のパンジーとビオラの写真
庭のパンジーとビオラ

パンジーやビオラを育てている方、黒と赤のこんなイモムシを発見して、ぎゃー!とか言ってませんか!?

庭で生活するツマグロヒョウモンの幼虫の写真
庭で生活するツマグロヒョウモンの幼虫

ツマグロヒョウモンの幼虫なので、駆除せずに大切に放置してあげてください。

ルリタテハを呼ぶには

ルリタテハはタテハチョウ科のチョウで、「瑠璃」の名前の通り、鮮やかな瑠璃色の帯模様が特徴です。生で見ると本当に美しい色合いです。

庭に来たルリタテハの写真
庭に来たルリタテハ

しかし、翅を閉じると、木の幹や落ち葉にそっくりの隠蔽色になり、突然地味な感じになります。このギャップがたまらないです。

庭に来たルリタテハが翅を閉じているところの写真
庭に来たルリタテハが翅を閉じているところ

幼虫はホトトギスサルトリイバラなどを食べます。

庭のホトトギスの写真
庭のホトトギス

スジグロシロチョウを呼ぶには

スジグロシロチョウはシロチョウ科のチョウで、モンシロチョウとよく似ていますが、翅に黒い筋があります。

庭に来たスジグロシロチョウの写真
庭に来たスジグロシロチョウ

幼虫はアブラナ科の植物を食べます。

庭のナノハナの写真
庭のナノハナ

モンキチョウを呼ぶには

モンキチョウはシロチョウ科のチョウで、キチョウに似ていますが、翅の中央に銀色の斑紋があります。

庭に来たモンキチョウの写真
庭に来たモンキチョウ

幼虫は、シロツメクサなど、マメ科の植物を食べます。

庭のシロツメクサの写真
庭のシロツメクサ

この他にも、庭には、カタバミを食べるヤマトシジミや、ギシギシを食べるベニシジミ、ススキを食べるセセリチョウの仲間など、いろいろな蝶がいます。


参考文献

バタフライガーデンの作り方についての本は日本ではほとんどありませんが、日本でおそらく唯一の、そして最高の本が、私が尊敬する昆虫写真家、海野和男さんの『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』と『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』です。

海野和男(2021)『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』草思社

どのような花を植えるとどのような蝶が来るか、春、初夏、夏、秋と、季節ごとに紹介されている図鑑式の本です。
各植物のページに、チョウを呼ぶ力を「集客力」として5段階の表示があって、とても便利で楽しい作りになっています。
どの写真も本当に美しく、蝶と花の写真集としても楽しめます。
幼虫の食草ではなく、蝶の吸蜜源植物である花の紹介が中心ですので、イモムシはちょっぴり苦手だけど庭にたくさん蝶を呼びたいという方にも最高の本だと思います。

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海野和男(1999)『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』農文協

蝶の一生、蝶の種類、蜜源植物、食草など、とてもわかりやすいのに非常に細かい話まで載っています。植栽プランも紹介されていて、都会のベランダから広大な庭まで、自分の環境に合ったバタフライガーデン作りを模索できます。

森上信夫・林将之(2007)『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版

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バタフライガーデン:蝶が集まる花を植える

最近静岡県で増えているチョウについて。企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」

バタフライガーデン:蝶が産卵に来る植物を植える(アゲハチョウ科)

私は蝶が大好きで、バタフライガーデンを庭づくりの柱の一つにしています。

蝶が集まる庭を作るには、大きく二つのアプローチがあります。

  1. 成虫の食物である蜜源植物を植える
  2. 幼虫の食物である食草を植える

今回は、2の食草、特にアゲハチョウ科の食草についてです。

食草とは蝶が主に幼虫期に餌として食べる植物のことです。蝶の成虫が好きな蜜の多い花を植えれば蝶はやってきますが、庭に居ついてくれるようにするには、蝶が産卵し、孵化した幼虫が食べる植物を植える必要があります。

蝶は卵→幼虫→蛹→蝶完全変態をする虫です。幼虫とはイモムシのことなので、イモムシが嫌いな人は、食草を植えるというアプローチは難しいかもしれません。しかし、蜜源植物よりも来訪が多く、うまくいけば自分の庭で蝶の一生がめぐるようになります。

蝶の幼虫は、種類によって食べる食草が決まっています。例えば、アゲハ(ナミアゲハ)はミカン、サンショウ、カラタチなど、柑橘類の葉だけを食べますし、キアゲハはパセリ、ニンジン、ミツバなど、セリ科の葉だけを食べます。

私の庭には柑橘類の木があり、成虫が好む花も植えてあるので、春から秋まで、いつもアゲハチョウが舞っています。

日本産アゲハチョウ科21種のうち、私の庭がある静岡に生息しているのは12種です。アゲハチョウ科の幼虫はミカン科の植物を食べるものが多いですが、食草が異なるものもいます。

静岡に生息するアゲハチョウ科の食草

  1. アゲハ(ナミアゲハ):ミカン科
  2. オナガアゲハ:ミカン科
  3. クロアゲハ:ミカン科
  4. モンキアゲハ:ミカン科
  5. ナガサキアゲハ:ミカン科
  6. カラスアゲハ:ミカン科
  7. ミヤマカラスアゲハ:ミカン科
  8. ジャコウアゲハ:ウマノスズクサ類
  9. キアゲハ:セリ科
  10. アオスジアゲハ:クスノキ科
  11. ギフチョウ:カンアオイ類
  12. ウスバシロチョウ:キケマン類

1.アゲハ、2.オナガアゲハ、3.クロアゲハ、4.モンキアゲハ、5.ナガサキアゲハ、6.カラスアゲハ、7.ミヤマカラスアゲハ

アゲハ(ナミアゲハ)の写真
アゲハ(ナミアゲハ)
庭に来たアゲハ(ナミアゲハ)の写真
庭に来たアゲハ(ナミアゲハ)

例えば、こんな蝶や

庭に来たクロアゲハの写真
庭に来たクロアゲハ

こんな蝶や

庭に来たカラスアゲハの写真
庭に来たカラスアゲハ

こんな蝶を呼ぶためには、カラタチ、ユズ、ハッサク、アマナツ、ウンシュウミカン、サンショウなどミカン科の植物を植えると、産卵に来てくれます。

庭のユズとハッサクの木のまわりを舞うアゲハ(ナミアゲハ)の写真
庭のユズとハッサクの木のまわりを舞うアゲハ(ナミアゲハ
庭のアマナツの木のまわりを舞うモンキアゲハの写真
庭のアマナツの木のまわりを舞うモンキアゲハ
庭のカラタチの木のまわりを舞うナガサキアゲハの写真
庭のカラタチの木のまわりを舞うナガサキアゲハ

私はミカン科の果実は食べますが、葉は食べませんので、幼虫と食べるものがかぶっていないところも気に入っています。

ミカン科の植物は、一本植えておくと、果実が食べられ、蝶の舞が見られ、幼虫から自然の不思議を学べ、花の香りを楽しめ、常緑で冬も明るい気持ちになれ、いいことづくめです。

8. ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの写真
ジャコウアゲハ(2021)

ジャコウアゲハの幼虫の食草はウマノスズクサ類です。ウマノスズクサは意識的に育てているわけではありませんが、庭でジャコウアゲハをよく見かけるので、もしかしたら庭のどこかに生えているのかもしれません。

実は、ジャコウアゲハが食べるウマノスズクサ類を含み、ジャコウアゲハは幼虫時代にその葉を食べることによって、体内に毒を蓄積します。この毒は成虫になっても体内に残るため、ジャコウアゲハを食べた捕食者中毒をおこし、食べたものを吐き出してしまいます。一度ジャコウアゲハを捕食して中毒を経験した者は、二度とジャコウアゲハを捕食しなくなるわけです。

このジャコウアゲハに似ることによって身を守っているのが、オナガアゲハクロアゲハ、蛾のアゲハモドキです。このように体内に毒を持っている種類のまねをして自分の身を守ることをベイツ型擬態と呼びます。

9. キアゲハ

キアゲハの写真
キアゲハ
キアゲハの写真
キアゲハ

キアゲハの成虫はアゲハ(ナミアゲハ)とよく似たルックスですが、模様や色合いが微妙に違い、幼虫のルックスや食草に関しては全く違います。

キアゲハを呼ぶには、パセリ、ニンジン、ミツバなどのセリ科の植物を植えます。

私は、パセリ、イタリアンパセリ、ミツバ、アシタバ、フェンネル、コリアンダー、セルフィーユ、スープセロリなどをまとめて植え、その場所を「セリ科の庭」と呼んでいます。セリ科の植物を混植すると、交雑して香りや風味が薄くなり、ハーブとしてはイマイチになるとされていますが、管理のしやすさを優先して混植しています。

セリ科の庭の写真
セリ科の庭

セリ科の葉は私も食べるので、キアゲハの幼虫と食べるものがかぶってしまっています。ライバルでもあるため、キアゲハに対してはミカン科の葉を食べる蝶ほどの愛着を持てません。

セリ科の庭で生活するキアゲハの幼虫の写真
セリ科の庭で生活するキアゲハの幼虫

しかし、キアゲハの食草であるパセリ、ニンジン、ミツバなどは、他の食草に比べて育てやすいので、一番呼びやすいアゲハチョウかもしれません。

10.アオスジアゲハ

庭に来たアオスジアゲハの写真
庭に来たアオスジアゲハ

クスノキ科が食草です。私の庭にクスノキはありませんが、近くに雑木林があるため、そこで生まれたと思われる蝶がよく私の庭に遊びに来ます。

11.ギフチョウ

早春に現れる春の女神と呼ばれる蝶です。残念ながら幼虫も成虫も見たことがありません。食草はカンアオイ類です。ちょうどカタクリの花が咲く頃に成虫が現れるため、庭にカタクリを植えて、吸蜜に来るのを待っています。

12.ウスバシロチョウ

残念ながらウスバシロチョウも見たことがありません。食草のキケマン類は庭にも生えているので、もしかしたら今後目撃できるかもしれません。アゲハチョウ科とは思えない古風な蝶です。幼虫は石や枯葉の上で日向ぼっこするそうです!


参考文献

バタフライガーデンの作り方についての本は日本ではほとんどありませんが、日本でおそらく唯一の、そして最高の本が、私が尊敬する昆虫写真家、海野和男さんの『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』と『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』です。

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