最近静岡県で増えているチョウについて。企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」

企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」

ふじのくに地球環境史ミュージアムの企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」に行ってきました。静岡に生息する全種のチョウと、世界各地のチョウの標本が展示されています。(平成28年12月10日~平成29年3月26日)

ふじのくに地球環境史ミュージアム 企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」

ふじのくに地球環境史ミュージアム「静岡のチョウ 世界のチョウ」の写真

私はチョウが大好きです。特に好きなのはアゲハチョウ科のチョウです。小さいころから、アゲハクロアゲハの幼虫を飼育したり、観察したりしてきました。今は、バタフライガーデンを庭づくりの柱の一つにしています。

アゲハチョウ科は大型のチョウです。種類や個体によって大きさは違いますが、成虫はだいたい5センチから10センチくらいでしょうか。幼虫は刺激臭を放つ臭角を持ちます。幼虫の食草はそれぞれ異なりますが、ミカン科の植物を食べるものが多いです。

日本産アゲハチョウ科21種のうち、ギフチョウウスバシロチョウジャコウアゲハアオスジアゲハアゲハキアゲハオナガアゲハクロアゲハ、モンキアゲハナガサキアゲハミヤマカラスアゲハカラスアゲハの12種が静岡県に生息しているそうです。ギフチョウとウスバシロチョウは残念ながら見たことがありませんが、それ以外のチョウは私の庭にもよく訪れます。

「静岡のチョウ 世界のチョウ」より、静岡県に生息するのアゲハチョウ科の写真

「静岡のチョウ 世界のチョウ」より、静岡県に生息するアゲハチョウ科

標本で見るチョウは図鑑で見るチョウとは全然違います。光沢感や透け感、方向や光による色合いの変化など、写真ではどうしてもわからない部分があります。本物はあり得ないほどの美しさです。

展示の中で一番興味深かったのが、静岡県で増えているチョウです。静岡から消えたチョウや減少しているチョウがいる一方で、増えているチョウもいます。

「静岡のチョウ 世界のチョウ」より、静岡で増えているチョウの写真

「静岡のチョウ 世界のチョウ」より、静岡で増えているチョウ

最近、庭で見かけるようになった蝶

ここ数年、庭で作業をしていると、見かけないチョウを目撃するようになりました。ナガサキアゲハツマグロヒョウモンアカボシゴマダラです。以前は静岡県富士宮市で目撃するなんてまずあり得なかったチョウです。いるはずのないものが庭にいて、初めて見た時は興奮して我が目を疑いました。この展示で、やはり静岡県で近年見られるようになったチョウだったことが確認できました。

ナガサキアゲハ

ナガサキアゲハはアゲハチョウ科のチョウで、日本産のチョウでは最大級の種類です。モンキアゲハに似ていますが、後翅に尾状突起がないのが特徴です。シーボルトが長崎で最初に採集したため「ナガサキアゲハ」というそうで、江戸時代には九州以南にしかいなかったチョウです。それが静岡県の私の庭にも現れたのです!

庭のカラタチの木のまわりを舞うナガサキアゲハの写真

庭のカラタチの木のまわりを舞うナガサキアゲハ

アゲハチョウ科が好きな私にとってはうれしい北上でした。ナガサキアゲハの幼虫はミカン科の葉を食べるので、ミカン類の木がある私の庭に産卵に訪れたのだと思います。

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモンはタテハチョウ科のチョウで、漢字で書くと「褄黒豹紋」です。1980年代までは近畿地方以西でしか見られなかったのが、徐々に生息域が北上し、1990年代に東海地方でも見られるようになったそうです。そして、静岡県の私の庭でもよく見かけるようになりました!

庭のヒャクニチソウにとまるツマグロヒョウモンの写真

庭のヒャクニチソウにとまるツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモンの幼虫の食草は野生のスミレ類ですが、パンジーやビオラなどの園芸種も食べるため、近年の栽培量の増加と人為的な移動が北上の要因と考えられているようです。もちろん温暖化も影響しています。

アカボシゴマダラ

アカボシゴマダラはタテハチョウ科のチョウで、日本本土には生息していなかったチョウです。もともとは中国大陸や奄美大島に生息するチョウですが、違法に国内に持ち込まれた個体を元に意図的に放蝶されたものが定着・拡大しているそうです。静岡県富士宮市の私の庭でこのチョウを目撃した時は本当に驚きました。

庭を通過するアカボシゴマダラの写真

庭を通過するアカボシゴマダラ

最初はキアゲハかと思ったのですが、キアゲハにしては飛び方がおかしいです。ゆったりと舞っていたため、アサギマダラか!?と思いなおしましたが、色が全く違います。とにかく撮影してよく見た結果、アカボシゴマダラと判明した次第です。

「世界のチョウ」の展示もすばらしかったです。私のおすすめは、ミイロタイマイスカシシジミタテハウラモジタテハです。人智を超えたデザインです!絶対見に行ってみてください! or 絶対検索してみてください!

 おすすめの本

海野和男(2011)『図鑑 世界で最も美しい蝶は何か』草思社

私が尊敬する昆虫写真家、海野和男さんの本です。世界3大美蝶のミイロタテハ、モルフォチョウ、トリバネアゲハを中心に構成されています。これらのチョウを見るために中南米やアマゾンの奥地へ行くのは非常に困難なことなので、美しいチョウを図鑑で見ることができて感謝です。フランスの蝶収集家、マダム・フルニエのフルニエコレクションも載っています!

今森光彦(2014)『世界のチョウ』アリス館

私が尊敬する写真家、今森光彦さんの本です。里山・琵琶湖畔の写真家として有名な方ですが、オーレリアン(チョウを愛する人たちのこと)でもあります。巻頭の、アマゾン川流域を旅した時の話がとても印象的でした。私のおすすめのチョウ、ミイロタイマイ、スカシシジミタテハ、ウラモジタテハも載っています!

マジメかつシュール。「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の常設展

バタフライガーデン:蝶が集まる花を植える

バタフライガーデン:蝶が産卵に来る植物を植える(アゲハチョウ科)

バタフライガーデン:蝶が産卵に来る植物を植える(アゲハチョウ科以外)