芋茎(ずいき)はサトイモの茎です。サトイモの茎は品種によっては食べることができます。芋茎は生のものと乾燥させたものがあり、煮物やみそ汁の具などに使います。
こちらは我が家の畑に植えられたサトイモです。
こちらは収穫した里芋。
そして、こちらは収穫した芋茎です。
干し芋茎を作る
「八つ頭」の茎を使うことが多いようですが、我が家では「赤芽」の茎を使っています。
- サトイモの茎を洗って、土やゴミを落とします。
- 皮を剥ぎます。素手だと灰汁で指が黒くなるので、ゴム手袋をして剥ぎます。
- 天日で干します。そのまま清潔な場所で寝かせて干すか、茎に紐を通して吊るすか、適当な長さに切って干し網に入れて干します。
- カラカラになったら出来上がりです。2~3週間くらいです。
乾燥剤を入れた袋に保存してカビさえ生えなければ何年ももちます。下の写真は数年前に乾燥させた芋茎です。
戦国時代の武士のように芋茎を携帯する!
干し芋茎は戦国時代の野戦食でした。乾燥させた芋茎、または味噌で煮しめてから乾燥させた芋茎を長く編んで、芋がら縄にします。
兵士が腰に巻き付けて携帯するか、荷物を縛る縄として実際に使用します。
食べるときは、逆さまにして吊るした陣笠を鍋代わりにして、火でお湯をわかし、その中にちぎった芋がら縄を入れたそうです。味噌で煮しめた芋がら縄の場合は、芋茎にしみこんでいた味噌が溶けだして、芋茎も柔らかくなり、これだけで味噌汁が完成するというわけです!
食べられる縄!
私も芋茎を携帯したいと思い、干し芋茎を三つ編みにしてリースを作り、チャームとしてバッグにつけることにしました!これを携帯していれば、災害時の炊き出し鍋に投入できるかもしれません。
食べられるバッグチャーム!
芋茎の味噌汁を作る
干し芋茎で味噌汁を作ります。芋茎のアクをしっかり抜きます。
- 干し芋茎をたっぷりの水に30分くらい浸して戻し、水でよく洗い、水気を切ります。
- ざるにとり、水気を絞って、3センチくらいの長さに切ります。
- 沸騰したお湯に酢を少し入れて、芋茎を2~3分茹でます。
- 具として味噌汁に入れます。
下の写真の味噌汁は芋茎だけですが、具だくさんの味噌汁の中に入れると芋茎が「当たり」みたいになってさらにおいしいです。
『へうげもの』の明智光秀の芋茎の味噌汁を再現する!
私には、この芋茎の味噌汁を使ってどうしてもやりたいことがありました。
それは、『へうげもの』に出てきた、明智光秀の芋茎の味噌汁の再現です!
『へうげもの』は茶の湯の世界に心を奪われた戦国武将・古田佐介(織部)の生き様を描いた漫画です。
明智光秀の芋茎の味噌汁は、漫画では『へうげもの(3)』の「第三十席 しがない歩兵」に、アニメでは『へうげもの』の第十四話「哀しみのミッドナイト・パープル」に出てきます。
漫画
山田芳裕『へうげもの(3) (モーニングコミックス)』講談社
アニメ
NHKアニメワールド「へうげもの」 これまでのいきさつ 第十話~第二十話
アニメ「へうげもの」Amazon Prime Video
簡単に状況を説明しますと、
本能寺の変の後、明智勢は山崎の合戦に大敗し、落ちのびた光秀はわずかな家臣と一緒に羽柴勢に包囲された山城国・勝龍寺城にいます。家臣は光秀に、
「兵糧は逃げた者どもが持ち去ったようでござる……芋茎の縄と少々の味噌しかございませぬが……」
と伝え、芋茎の縄を刻み、鍋に入れ、芋茎の味噌汁を作ります。そのような中、光秀は、
「死に近づけば近づくほど……『わび』もまたはっきりとわかってくるものと存じます」
という利休の言葉を思い出します。
出された食事は、木地の折敷の上に、芋茎の味噌汁が入った椀が一つ、それに箸が添えられただけ。
こんな感じです!自分で作った芋茎の味噌汁と家にあったもので再現してみました!
家臣はそれぞれの思いを口にします。
「それにしても粗末よの……」「よいではないか……」「足軽の頃を思い出し食らうもまた一興……」
すると、光秀は、
「しばし待たれい」
と言って立ち上がり、庭に出て、何やらとってきます。そして、一夜の食事が劇的に変わるのです!
こんな感じです!私も、庭に出て、桔梗と白石をとってきて再現してみました!漫画では芋茎の味噌汁の中に桔梗の花を入れていましたが、桔梗の花は、食べられるという説と食べてはいけないという説があるので、とりあえず味噌汁の中には入れずに脇に添えました。
「な………なんと贅沢な……たかが荒縄の味噌汁が……早咲きの桔梗と白石の箸置きだけでかようにも……」
家臣たちは感涙します。桔梗は明智の家紋です!(号泣)
こうして、光秀はこの一夜の食事に「わび」の神髄を見るのです。
「宗易殿………私も『わび』の良さを味わっております」
「『美』とは強きものですな……そう……それは『武』に等しく……」
桔梗と白石がある味噌汁とない味噌汁では本当に味が違います。美は人の味覚さえ変える力を持っているのです!
参考文献
山田芳裕『へうげもの(3) (モーニングコミックス)』講談社