今回の庭ノートは、アメリカの育種家、ルーサー・バーバンクと、彼が生み出した植物、シャスタデイジーについてです。
私がルーサー・バーバンクを初めて知ったのは小学校3年生のときです。
国語の教科書に、三千種類以上もの新しい品種を作り出して世界に広めたアメリカの育種家ルーサー・バーバンク(Luther Burbank, 1849-1926)と、彼が作り出した品種、バーバンク・ポテト(Burbank potato)やシャスタデイジー(Shasta daisy)についての話が載っていました。
私は、バーバンク・ポテトもさることながら、シャスタデイジーがとても気になりました。教科書に、こんな記述があったからです。
以下、中村浩「ルーサー=バーバンク」『小学校 国語 三年 下』学校図書株式会社より抜粋です。
バーバンクーポテトが広まって、お金が入ってくると、バーバンクは、アメリカの西部に農場を開きました。それから七十七才で死ぬまでの間に、大きくておいしいくだものや美しい草花など、三千しゅるいいじょうも作り出し、世界じゅうに広めました。
その中で、シャスター‐デージーは、日本にもかんけいのある花として有名です。まっ白いひとえの大りんで、きくのように美しいこの花は、今では、どこの国でも作られ、広く人々に知られています。けれども、もともとはバーバンクが苦心して作り出したものだということは、あまりしられていません。
バーバンクは、日本・イギリス・ドイツ・アメリカ、四か国の野ぎくを集め、それぞれのいいところをとり入れて、新しい花を作り出したのです。すっきりしたくきに雪のような白い花をさかせ、しかもじょうぶで、どこにでも育ちます。この花に、バーバンクは、シャスター‐デージーと名づけました。シャスターというのは、バーバンクの農場から見える、一年中まっ白な雪をいただいている山の名です。デージーとは野ぎくのことです。
世界に知れわたっているこの新しい花に、日本の野ぎくのきよらかな白さがとり入れられているのは、うれしいことです。
シャスタデイジーのことは、その後もずっと気になり続け、結局、庭に植えました。
せっかくなので、交配の元になった、フランスギクと日本のハマギクも植え、その間にフットステップ用にレンガを「×」と「=」の形に並べ、「フランスギク×ハマギク=シャスタデイジー」になるようにしました。
フランスギクは5月~6月、ハマギクは10月~11月、シャスタデイジーは6月~7月に咲くので、この3つの花を同時に見ることはできません。
※ハマギクは、よい写真がなかっただけで、本当はもっときれいな花です!
フランスギク、ハマギク、シャスタデイジーは、よく似た花を咲かせますが、葉の形は全然違います。
シャスタデイジーは、さらに品種改良が進み、こんなモコモコの花まであります。
ルーサー・バーバンクの長年の研究・実験の成果を綴った膨大な記録は、『植物の育成』として岩波書店から出版されています。ちなみに、オリジナルのタイトルは『How Plants Are Trained to Work for Man』です。
『植物の育成』には、とげなしサボテンの品種改良の過程など、興味深い話がたくさん載っています。植物も、自分にとって有益であるならば、花粉の媒介者である虫を引き付ける姿をするのと同じように、人間が好む色や形に自らを変えていくはずです。植物の環境適応や進化について考えさせられます。
参考文献
ルーサー・バーバンク (著), 中村 為治 (翻訳)『文庫リクエスト復刊 植物の育成』(岩波文庫)
ルーサー・バーバンクが、自らの長年の研究・実験の成果を綴った膨大な記録です。日本語訳は、古い文体で、さらに旧字体で書かれているため、さらっと読むことができません。自分の頭の中で現代的な日本語に訳さないと理解ができないため、読むのにものすごく時間がかかります。でも、この貴重な本を翻訳してくださった中村為治先生、復刊してくださった岩波書店さんに感謝です。
高原 操 (著), 中尾 好孝 (写真)『パワースポット、シャスタ山の歩き方』(VOICE)
「シャスタデイジー」の名称は、アメリカ・カリフォルニア州にあるシャスタ山にちなんだものです。