5月は、新茶の季節、薫風の季節、そしてもう一つ、柑橘の花の季節です。
松尾芭蕉の俳句に、駿河路や花橘も茶の匂ひ(するがじや はなたちばなも ちゃのにおい)という句があります。
確かに、静岡は香り高い橘の花までもお茶の匂いがするくらい製茶が盛んではありますが、橘の花の香りも相当なものです。
柑橘の花は、とても高貴で甘い香りがします。
庭では、ウンシュウミカン、アマナツ、ユズ、ハッサクなどの柑橘類の花が楽しめますが、それぞれ少しずつ香りが違います。
レモンの花は、色も少し違い、花の外側が赤紫色です。
庭で咲く花のうち、柑橘の花と同じくらい香りが印象的なのが、キンモクセイとロウバイです。
キンモクセイは9月末から10月初めに、ロウバイは1月中旬に咲きます。
どちらも甘い香りですが、キンモクセイの香りはふとした瞬間にふわっとやってくる感じ、ロウバイの香りは冷たい空気の中をどこからか漂ってくる感じです。
しかし、柑橘の花の香りは、やってくるというより、降ってくるという感じです。
根角博久(2002)『NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 柑橘類』NHK出版. の5月の章に、柑橘の花について、「天から香水をまいたかのように、高貴な香りが一面に漂います。」という一節がありますが、まさにこの通りです。
柑橘類の果実の香りはなじみがあると思いますが、柑橘類の花の香りは嗅いだことがない方もいらっしゃるかもしれません。果実のような爽やかでみずみずしいリフレッシュ系の香りではありません。かぐわしいとはこういうことなのか!?という香りです!
この香りを閉じ込めたくて、モイストポプリにしています。
モイストポプリは、塩の防腐効果を利用して、花を乾燥させずにポプリにしたものです。
香りを閉じ込めるには、無水エタノールを使って香水にしたり、ホホバオイルを使って香油にしたり、蜜蝋を使って練り香水にしたり、植物を乾燥させてドライポプリにしたりといった方法があります。
しかし、私の場合、体や物や空間に香りをつけたいわけではなく、必要な時に香りを嗅ぎたいという目的なので、一番作るのが簡単で香りが長持ちするモイストポプリにしています。
モイストポプリ
<材料>
- 花
- 粗塩
- ガラス瓶(塩で錆びるので、蓋は金属ではないほうがよいようです。)
<作り方>
- 花を摘みます。
- ゴミを取りのぞきます。
- 花が濡れている場合は乾かします。
- 花と粗塩を、層になるように交互に入れます。
- 蓋をして一か月ほど寝かせます。
香りを楽しみたいときにガラス瓶の蓋を開けて嗅ぎます。
時間が経つと花は変色しますが、作りたては、花の色と塩の白のコントラストがきれいです。モイストポプリは花を乾燥させずに作るので、乾燥させると香りがなくなる種類の花に適しています。
瓶に詰めても十分いい香りではありますが、やはり、天から降ってきてこその香りです。
柑橘の花の香りを嗅いだことのない方は、機会があったらぜひ5月のみかん畑に行ってみてください!
おすすめの本
根角博久(2002)『NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 柑橘類』NHK出版.