今回の庭ノートは、若葉の間を吹き抜けて初夏の香りを運ぶ南風、「薫風(くんぷう)」のお話です。
私は年間4つ、心待ちにしている風があります。春一番、薫風、二百十日の風、そして木枯らしです。
春一番は立春から春分の間にその年に初めて吹く南寄りの強い風、薫風は新緑の間を吹きぬける初夏のさわやかな風、二百十日の風は立春から数えて210日目の台風がよく来る厄日の風、木枯らしは太平洋側地域で晩秋から初冬の間に吹く北よりの強く冷たい風、です。
庭に吹く春一番については、2017年3月5日の記事で紹介しました。
5月に入り、今度は待ちに待った薫風が吹きました。
「薫風自南來 殿閣生微涼(くんぷうみなみよりきたり、でんかくびりょうをしょうず)」という禅語があります。
南から薫風が吹き、殿閣を涼しい空間にする、という意味ですが、この句を禅の世界で考えると、煩悩妄想を消し、分別執着の汚れを洗い流した、清涼そのもの=悟りの境地、を表現したものになるということです。
「薫風」の語源はこのように漢語ですが、訓読みして和語化して「風薫る」と言ったりもします。
「薫風自南來」の言葉のとおり、薫風は本当に南から来ます。
私は五色の吹流しを揚げて薫風を楽しんでいます。端午の節句とは関係なく、薫風を楽しむために揚げています。長さ1メートルの小さな吹流しで、薫風が当たるベランダのコーナーの手すりにつけています。吹流しを気持ちよく泳がせることができるのは、薫風だけのような気がします。
もう一つの楽しみ方は、お気に入りの木の北側に立って薫風を楽しむというものです。どの木を通ってくるかで、薫風の印象が少し違います。
私が一番気に入っているのは、モミジを吹き抜ける薫風と、ケヤキを吹き抜ける薫風です。
写真では全然分からないですよね。
動画を撮ったのですが、風の温度や湿度や雰囲気が伝わらなく、薫風の良さが全く出ていなかったので、写真だけにしました。
とても爽やかで、南から、さーっとやって来て、ふわっと上に抜ける感じです。モミジを吹き抜ける薫風のほうが、ケヤキを吹き抜ける薫風より、やや繊細な感じです。
同じ南風でも、春一番のような荒々しさや湿っぽさ、チャラい感じがありません。秋や冬の風のようなストイックさや切なさもありません。チャラすぎずストイックすぎず、年間で吹く風の中で、一番健全な感じがします。極めて個人的な印象になりますが、キャラとしては、外連味のない静岡県民みたいな感じです。
おすすめの本・グッズ
四季折々の美しい風の名前が載っています。風の作用やイメージを写した静止画なのに、どの写真からも風そのものを感じます。
250の禅語の有名なことばが載っています。それぞれに解説と寸話がついています。Kindle版も出ています。
こいのぼりや五色の吹流しが一匹単位で手に入ります。長さもいろいろあります。