今回の庭ノートは、秋の七草を植えた「秋の七草の庭」についてです。
テーマのある庭
庭を小さな空間に分けて、それぞれにテーマを設定しています。
これは、私が尊敬するガーデナー、ベニシアさんや黒田健太郎さんが提案されている方法です。
ベニシアさんの庭は、楽しんで考えたテーマごとに小さなコーナーで構成されています。NHKの「猫のしっぽ カエルの手」の「Vol.60 テーマのある庭」で紹介されていました。スパニッシュガーデン、ワインガーデン、フォレストガーデン、コテージガーデン、ジャパニーズガーデンなど、聞いているだけでワクワクするような庭ばかりです。
ベニシア・スタンリー・スミス(2013)『ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月』世界文化社
また、黒田健太郎さんは、初めからよくばって庭全体を造ろうとしないで、自分が具体的にイメージできる「自分サイズ」の広さから庭づくりをスタートし、この「小さなシーンづくり」を少しずつ増やしていき、それをつないでいくという方法を提案されています。
黒田健太郎(2012)『健太郎のGarden Book』MUSASHI BOOKS
私も、土壌・日照時間などの条件、目的、手がかけられる時間などを考えて、庭を小さな空間に分けて、それぞれにテーマを持たせるようにしています。
小さな空間に分けてテーマを決めることで、どこに何を植えるか迷いが少なくなりますし、庭も使いやすくなります。また、手入れもしやすくなりますし、庭仕事で他人の助けも借りやすくなります。
秋の七草の庭
今回は、秋の七草の庭を紹介します。
秋の七草は、秋を代表する七つの草花で、萩(ハギ)・尾花(オバナ)・葛(クズ)・撫子(ナデシコ)・女郎花(オミナエシ)・藤袴(フジバカマ)・桔梗(キキョウ)です。
秋の七草は、春の七草のように食べられるわけではなく、花をめでます。
秋というのは旧暦の7月から9月なので、現代では8月から10月くらいになるでしょうか。現代人がイメージする秋とは少し違い、どちらかというと夏から初秋の印象だと思います。
庭の一角に秋の七草だけを植えているコーナーがあり、ここを秋の七草の庭と呼んでいます。
秋の七草の庭と言っても、直径1メートルくらいの円の中に、秋の七草をまとめて植えてあるだけです。縁は、その辺に落ちていた直径20センチ~40センチくらいの石で囲いました。
籠の花入に投げ入れた秋の野の花のような感じにしたかったのですが、花期がバラバラでなかなかうまくいきません。地域や品種にもよるのかもしれませんが、静岡の私の庭では、七種類の花が同時には咲くことはありません。
秋の七草と言っていますが、実は、葛(クズ)の代わりに吾亦紅(ワレモコウ)を植えていて、私の好みで中身を一つすり替えてしまっています。
秋の七草の庭のメンバー紹介です。
萩(ハギ)
萩色のミヤギノハギと白色のシロハギを植えていますが、シロハギの方が威勢がいいです。
尾花(オバナ)
尾花とはススキのことです。穂だけではなく葉も楽しめるように、矢羽ススキ(矢筈ススキ)を植えています。
吾亦紅(ワレモコウ) ※葛(クズ)の代わり
秋の七草の葛は繁殖力が強く、庭に植えると大変なことになるので、葛の代わりに吾亦紅を植えています。吾亦紅は秋の七草には入っていませんが、個人的には一番秋らしい花だと思います。
撫子(ナデシコ)
撫子の花は本当に繊細で美しいです。「大和撫子」という言葉が乱用されていて、撫子に申し訳ないです。
女郎花(オミナエシ)
名前の由来ですが、「おみな圧し」で美女を圧倒する美しさであるという説、「おみな飯」で花が粟に似ているので女の飯であるという説、など、いろいろあるそうです。どちらにしても微妙な名前です。
藤袴(フジバカマ)
昔は河原などにたくさん生えていましたが、今では減ってしまい、準絶滅危惧種だそうです。長距離移動をする大型の美しい蝶「アサギマダラ」が吸密に来る花なので、私の庭でもたくさん増えてほしいのですが、なかなか思うようにいきません。
桔梗(キキョウ)
蕾は風船のよう、花は星のようで、とても魅力的な植物です。私は桔梗の花を『へうげもの』の明智光秀の芋茎の味噌汁の再現 に使います。
それぞれの秋の七草を
秋に咲く花はしっとりとした雰囲気の花が多く、春に咲く花よりも大人な感じです。
先人が見つけた美を踏襲するのもよいですが、カスタマイズして、自分だけの秋の七草を集めてみても楽しいと思います。
ベニシアさんに倣って!テーマのある庭、ブーケガルニの庭を作る