今回の庭ノートは、八十八夜に庭のチャの木で茶摘みをして、電子レンジとホットプレートで蒸し製煎茶を作ったら、とてつもなくおいしかったというお話です。
静岡県は、全国の茶園面積、収穫量の40%を占める、日本一の茶どころです。同じ静岡県内でも、富士・沼津、清水、本山、牧之原、川根、掛川、天竜と、地区によって製法や味にそれぞれ違いがあり、さまざまな高品質の日本茶を楽しむことができます。
私は静岡県に住んでいるため、身近にすばらしいお茶屋さんがたくさんあり、プロが作った最高においしいお茶を毎日飲んでいます。
しかし、庭にチャの木が2本あり、いったいどんな味がするのだろうと気になったので、八十八夜に自分で茶摘みをし、自家製のお茶(蒸し製煎茶)を作って飲んでみることにしました。
八十八夜は立春から数えて88日目ということです。2017年の八十八夜は5月2日です。このころは、新茶の摘みとりの時期で、八十八夜に摘んだ新茶を飲むと長生きをすると言われています。
庭のチャの木は垣根を兼ねた庭木として植えられているため、茶園でおなじみのかまぼこ型ではありません。樹高1メートルくらいの普通の木です。
一芯二葉(新芽の真ん中の芽と葉2枚)を手で摘みます。
生葉100gを摘みました。
緑茶、ウーロン茶、紅茶は、同じチャの木の葉から作られます。違いは、チャの葉を発酵させるかどうかです。全く発酵させないと緑茶、50%程度発酵させるとウーロン茶、100%発酵させると紅茶になります。
チャの生葉には酵素が含まれていて、そのままにしておくとどんどん酸化して茶色くなります。緑茶の場合、摘んだらできるだけ早く熱を加えて、酸化を止めます。これを殺青といいます。
殺青には蒸す方法と炒る方法があります。日本のほとんどのお茶は、蒸し製煎茶です。蒸気で茶葉の酵素を殺青し、もみながら乾燥して、最終的に細くもんで針状のお茶に仕上げます。これに対して、中国式の製法である釜炒り茶は表面温度300℃くらいの釜で炒って殺青します。
今回は蒸し製煎茶を作ってみることにしました。
作り方は下記の本を参考にしました。
増澤武雄(編集)、山福朱実(イラスト)(2007)『茶の絵本』農文協.
緑茶の製造工程は、大きく、殺青→揉捻→乾燥に分けられます。さらに細かい製造工程に分けられ、手揉みには非常に高度な技術が必要ですが、家庭で楽しむには、とりあえず蒸して揉んで乾燥すればいいということになります。
①殺青
チャの生葉にラップをかけて、1分30秒くらい電子レンジにかけて蒸します。
敷物の上で冷まします。
120℃のホットプレートで、よく混ぜながら蒸し露と茶葉の水分の一部を飛ばします。
②揉捻
敷物の上で茶葉を揉んでは100℃~120℃のホットプレートで水分を飛ばす、を繰り返します。
軽く揉みながら乾燥
強く揉みながら乾燥
形を整えて揉みきり
③乾燥
100℃~120℃に調節したホットプレートでに和紙を敷き、茶葉を薄く広げて乾かします。
出来上がり
揉みきりが難しく、針のようなまっすぐな形には仕上がりませんでしたので、蒸し製玉緑茶みたいな感じになりました。
茶摘みから完成まで、2時間半くらいでした。100gの生葉から25gのお茶ができました。
さっそく試飲です。
茶葉1人3g、よく沸騰させて70℃に冷ましたお湯1人60mlで、浸出時間は2分にしました。
普通にお茶です!というより、その辺のおいしくないお茶よりおいしいというか、その辺のおいしいお茶よりおいしいです!
もっと草っぽい野性味あふれる味だと思っていたので驚きでした。自家製のお茶というものは、いい意味で「田舎のお茶」という味がしますが、田舎っぽさもなく、スノッブさもなく、何ともバランスがとれたお茶でした。
香りもよく、生臭くも焦げ臭くもありません。色もしっかり出ていますが濁りがなく美しいです。味は、まろやかであまく、玉露のようなヌメリが若干あり、ほんの少し渋みがあって、にもかかわらず爽やかです。味がしっかり出ているのにしつこくないです。新茶ならではのやさしさもあります。何より、雑味がなく、生粋のお茶という感じです。
一煎目は新茶のまろやかさが、二煎目は新茶のさわやかさが際立ちました。
なんかすごい自画自賛になってしまいました。
技術がないのにおいしくできた秘訣は、機械ではなく手摘み手揉みでやったこと、短時間で茶摘みから飲むところまでを一気にやったこと、八十八夜にやったこと、一人で雑念なしでやったこと、庭のチャの木に対してリスペクトの心があったこと、かなと思っています。
おすすめの本
増澤武雄(編集)、山福朱実(イラスト)(2007)『茶の絵本』農文協.
農文協のつくってあそぼうシリーズはすばらしいです。茶の起源や歴史、種類などが、わかりやすくまとめられています。蒸し製煎茶のほかにも、釜炒り茶、包種茶、紅茶の作り方も載っています。