鳥蝶(ちょうちょう)の庭
私は蝶が大好きで、バタフライガーデンを庭づくりの柱の一つにしています。
蝶が集まる庭を作るには、大きく二つのアプローチがあります。
- 成虫の食物である蜜源植物を植える
- 幼虫の食物である食草を植える
今回は、1の蜜源植物についてです。
蝶の成虫の食物は主に花の蜜です。(オオムラサキのように、樹液や果汁を吸うものもいます。)
蝶の幼虫の食草は、アゲハはミカン、カラタチなどの柑橘類、キアゲハはミツバ、ニンジンなどのセリ科の植物、といったように、蝶によって食べる葉っぱが違います。しかし、成虫の蜜源植物についてはそのような違いはなく、蜜が吸いやすい花であればよいようです。
蝶にとって蜜が吸いやすいのは、小さな花がたくさん集まった集合花です。改良された園芸品種よりも、野草や野草に近い花を好むようです。また、蝶によって色や種類に好みがあり、例えば、モンシロチョウは黄色い花、アゲハチョウは赤い色の花にひかれる傾向があります。どの蝶にも好まれる花の色は、赤紫といわれています。
私の庭では、縁側のすぐ向こうの庭にバードフィーダー(鳥の餌台)を設置し、冬の間はひまわりの種をおいて鳥を呼んでいますが、夏の間はブッドレアなど蝶が好む花を咲かせ、鳥の代わりに蝶を呼んでいます。そのため、この場所を「鳥蝶(ちょうちょう)の庭」と呼んでいます。
鳥は蝶の幼虫の天敵でもありますが、それは大自然の厳しい掟なので仕方ありません。鳥も蝶も好きなので、どちらとも適当に関わるようにしています。
私の庭で特に蝶が集まるなと感じる、蜜源植物ベスト5を紹介します。
ブッドレア
ブッドレアは英語でバタフライブッシュといい、蝶が集まる花として有名です。手入れが簡単な落葉低木で、蝶が好きな花を毎年咲かせ、花期も長く、夏から秋まで咲き続けます。これさえ植えれば庭にはいつも蝶が飛び回るといわれています。
サンジャクバーベナ
サンジャクバーベナのサンジャクとは「三尺」のことで、その名の通り、草丈はおよそ90センチです。庭に植えっぱなしにしておけばきれいな花を咲かせてくれる、手のかからない多年草です。小さな花によく蝶が集まります。
ヒャクニチソウ(ジニア)
ヒャクニチソウも蝶が好む蜜源の一つです。一年草なので毎年植えつけなければなりませんが、名前の通り花期が長く、色も赤、黄色、白、オレンジ、ピンクなどがあり、どの蝶にも好まれます。
ヒガンバナ
ヒガンバナにはアゲハチョウの仲間が本当によく訪れます。9月のお彼岸の時期に咲く花期が短い植物ですが、蝶の滞在時間が長い花のように感じます。様々ないわれから庭に植えるのを嫌う人もいるようですが、見方によってはおめでたい花で、球根を植えっぱなしにしておけばよい、美しくて手がかからない花です。
ヤブカラシ
ヤブカラシの花はアゲハチョウの最高の蜜源です。ほかの植物をそのツルでおおってしまうため、厄介な雑草とされていますが、私は、蝶のために何本かは花が咲くまでそのままにしています。砂糖菓子のようなきれいな小さな花が咲きます。
春にもナノハナやツツジなどに蝶が集まりますが、まだ蝶自体の数が少ない時期なので、夏ほどたくさん来ている印象がありません。蝶の数が増え、自然環境で花が少なくなる夏に咲く蜜源植物を植えると、多くの蝶が集まってくれます。
参考文献
バタフライガーデンの作り方についての本は日本ではほとんどありませんが、日本でおそらく唯一の、そして最高の本が、私が尊敬する昆虫写真家、海野和男さんの『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』と『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』です。
海野和男(2021)『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』草思社
どのような花を植えるとどのような蝶が来るか、春、初夏、夏、秋と、季節ごとに紹介されている図鑑式の本です。
各植物のページに、チョウを呼ぶ力を「集客力」として5段階の表示があって、とても便利で楽しい作りになっています。
どの写真も本当に美しく、蝶と花の写真集としても楽しめます。
幼虫の食草ではなく、蝶の吸蜜源植物である花の紹介が中心ですので、イモムシはちょっぴり苦手だけど庭にたくさん蝶を呼びたいという方にも最高の本だと思います。
海野和男(1999)『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』農文協
蝶の一生、蝶の種類、蜜源植物、食草など、とてもわかりやすいのに非常に細かい話まで載っています。植栽プランも紹介されていて、都会のベランダから広大な庭まで、自分の環境に合ったバタフライガーデン作りを模索できます。
バタフライガーデン:蝶が産卵に来る植物を植える(アゲハチョウ科以外)
ガーデンスティックの使い方。バタフライスティックで「ちょうちょう」の楽譜を作る。
最終更新日 2021年4月21日