今回の庭ノートは、フランスのイヴォワールにある「五感の庭(Le Jardin des Cinq Sens)」に行ったお話で、前回の続きです。
前回の記事: フランス イヴォワールの「五感の庭」その1
「五感の庭」の10区画を順番にみていきます。
1.Prairie alpine(高山草原)
高山植物が植えられている区画ですが、下の写真の岩は氷河漂礫(氷河によって運ばれてきた岩)だそうです!我が家で応用するなら、富士山の溶岩を置いてコケモモを植える、でしょうか!?
2.Sous-bois(下草)
木の下の日陰に、およそ50種類のシダが植えられています。きっと珍しい品種もあったのだと思いますが、シダ類は、温帯・亜熱帯で水が豊富にある日本では見慣れた存在であるため、何となくさらっと通ってしまいました。
3.Tissage(織物)
ルネッサンスのタペストリーに触発された庭だそうです。チェス盤のように区切られた中に、人間と関係の深い2種類の植物、白いオールドローズとオート麦が植えられています。人間と植物との古くからのつながりについて思いを巡らせる、メッセージ性の強い庭です。
4.Cloître(修道院)
この庭、ほしいです!
修道院の庭は私の憧れの庭です。私にとって修道院の庭とは、回廊に囲われて、中央に噴水か井戸があって、きちんと区画整理された中に野菜や薬草が植えられていて、ところどころにベンチがあり、瞑想ができるようになっていて、場合によってはブドウ園があってワインを作っていて、さらにさらに場合によっては牛を飼っていてバターを作っているところです。
「五感の庭」のこの区画には薬草のみが植えられていました。効用によって植物がまとめられていましたが、個人的な理由で、腸に効く薬草が気になりました。
5.Le jardin du goût(味覚の庭)
食べられる植物を舌で楽しむ味覚の庭です。
残念ながら勝手に採って食べてたりすることはできず、食べられる植物について目で学びます。
6.Le jardin de l’odorat(嗅覚の庭)
香りのよい植物を鼻で楽しむ嗅覚の庭です。
私の庭にも、パイナップルセージ、オレンジミント、ローズゼラニウムなどを植えていますが、ここには、コーラ、ゴム、カレーなどの香りがするおもしろい植物がありました。
7.Le jardin du toucher(触覚の庭)
おもしろい手触りの植物を肌で楽しむ触覚の庭です。
私の庭にも、ラムズイヤーやラグラスなど、もふもふ系の植物を植えていますが、この庭はチクチク系の植物もたくさんありました。手触りがいいものだけを集めないところがすばらしいです!
8.Le jardin de la vue(視覚の庭)
色合いの美しい植物を目で楽しむ視覚の庭です。
同じピンク系の花でも色合いが微妙に違い、ピンクって何種類あるんだろうと思わせる庭でした。視覚の庭が一番作るのが難しかったのではないかと思います。
9.Le jardin de l’ouïe(聴覚の庭)
噴水の水の音や鳥のさえずり、風の音を耳で楽しむ聴覚の庭です。
噴水と水辺の植物がありますが、フェンスで囲まれていて中に入れないようになっています。鳥は上から入れます。目を閉じて、水や風や鳥の音に耳を澄ませます。
人の声が気になりますが、人もまた自然の産物です!
10.Bordures(縁)
敷地の縁にあり、通り道でもありますが、とても落ち着いた場所です。
ベンチに座っていていたら、もふもふの烏骨鶏!?が生垣から出てきました!
ボーダーガーデンの隅には、おしゃれな鳥の家もあります。
感じたこと
視覚に訴える華やかな庭が好きな方にとっては、ぱっとしない印象かもしれません。しかし、五感重視、コンセプト重視の私にとっては、とても勉強になり、心温まるすばらしい庭でした!
この五感へのこだわりは、さすがフランスです!私の庭にも取り入れたいアイディアがたくさんありました!
一方で、日本の自然の多彩さにも改めて気づきました。五感を使って自らアプローチしなくても、庭にただいるだけで五感を刺激するものが向こうからやってくるのです。
あらゆる種類の雨や風、時には台風、鳥だけではなくセミなどの虫の鳴き声、とんでもないスピードで成長する植物、何種類あるかわからない緑色、どこからともなくやってくる花の香りや実の香り、その辺に生えている薬味の味。
耳を澄まさなくても、鼻を近づけなくても、目で違いを見極めなくても、いろいろなものが向こうから勝手にやってきます。ありがたい環境ですが、情報量が多すぎて五感がマヒすることがあるようにも思います。時には一つの感覚だけに集中すると新しい発見があるかもしれないと思いました。