今回の庭ノートは、駿河湾 土肥沖から汲んできた海水を煮つめて、塩とにがりを作ったお話です。
戸田塩(へだしお)って知っていらっしゃいますか?
戸田(へだ)は西伊豆にある地名です。現在は沼津市に合併されていますが、昔は静岡県田方郡戸田村でした。西伊豆はどこも素晴らしい所ばかりですが、戸田は子供のころから毎年夏に訪れていることもあって、私にとって非常に思い入れの深い場所です。
特に駿河湾と戸田港を隔てている御浜岬(みはまみさき)がすばらしく、この岬の港側が砂地で海水浴場になっています。岬には松林が広がっていますが、岬の駿河湾側は、湾内とはいえ外海的な雰囲気で、全く違った海の様子が味わえます。なんとも絶妙なサイズの海水浴場で、桃源郷的な何かを持っている場所です。
そして、戸田には、海水を釜で沸かして塩を採るという伝統的な方法で製塩した戸田塩(へだしお)があります!とってもおいしい塩です!
この戸田塩の作業小屋の塩焚き釜を見て、自分で塩を作ってみたくなったという次第です。
海水には、塩(塩化ナトリウム)のほかに、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カリウムなどが含まれています。塩を作るには、塩化ナトリウムを、それ以外の成分や水と分ければいいということになります。
塩の作り方は、下記の本を参考にしました。
高梨浩樹 編、沢田としき 絵(2006)『塩の絵本』農文協.
1.海水を汲んでゴミや砂をとりのぞく
まずは海水を調達するところからです。その辺の海岸で汲んで来ようと思いましたが、『塩の絵本』には「市街地近くの汚れた湾内や河口付近は、さけよう。防波堤の外側や岩場など、できるだけ、水のきれいな場所でくもう」とあります。
こうなったら、沖に出て海水を汲んでくるしかない!と思っていたところ、海水を欲しがっていることを知った私のヨット師匠2人が、伊豆の土肥沖でとてもきれいな海水を汲んできてくれました!
しかも証拠写真まで撮ってきてくれました!感謝です!
駿河湾の海水を汲む様子の動画
今回は海水4リットルを使います。
まずは、海水をろ過してゴミや砂をとりのぞきますが、さすがヨットで土肥沖まで行って汲んできてもらった海水です!とてもきれいで、目で確認できるようなゴミや砂は全くありません!
一緒に作業をしていた妹と、「これ、きれいすぎて漉す必要なくない?」と話していたところ、ろ紙に5ミリくらいの物体が引っかかりました。
なんと、クラゲの赤ちゃんでした!
「海水をろ過してゴミや砂をとりのぞく」ではなく「海水をろ過してクラゲをとりのぞく」という工程になりました。
このクラゲの赤ちゃんは小さな水槽に移して飼うことにしました。救出作業に思いがけない時間をとられました。
2.荒炊きをして石こう(硫酸カルシウム)をとりのぞく
次に、海水を琺瑯の鍋に入れて、10分の1の量になるまで強火で煮つめます。今回は4リットルの海水なので、400ミリリットルになるまで煮つめます。
10分の1の量まで煮つまったら、ろ過して、石こう(硫酸カルシウム)をとりのぞきます。石こうは鍋にもこびりついて、内側がざらざらになりますが、洗えばとれます。
3.本炊きをして煮つめる
石こうをとりのぞいた海水を、土鍋に移します。はじめの海水の40分の1の量になるまで煮つめます。4リットルの海水だったので、100ミリリットルになるまで煮つめます。
煮つまって、塩の結晶が見えてきました。
4.脱水して塩とにがりをわける
海水が100ミリリットルになったらろ過します。ろ紙に残ったのが塩、下に落ちたのがにがりです。
塩をさらし布に包んでしぼり、さらににがりをとりのぞきます。
塩をドライヤーで乾燥させます。
戸田塩は、クラシック音楽をきかせながら1週間ゆっくりと水を切り、熟成させるそうです。私の塩は、母と妹と私の、しょうもないありあわせの話を聞かせて乾燥させました。
5.塩ができあがる!
4リットルの海水から80グラムの塩ができました!完成度の高い、非常に美しい塩です!
海水のろ過から塩の完成まで、所要時間は約2時間でした。
さっそく試食です!
深い!そして複雑です!なんというか、NaClじゃないです!NaCl以外の何ものかがいろいろ含まれている感じです!
おまけ:副産物のにがりで豆腐を作る
にがりは豆乳を豆腐に変える凝固剤で、主成分は塩化マグネシウムです。
副産物のにがりで豆腐を作ってみました。にがりの濃度がわからなかったので、極めて適当な作り方です。ジップロックの耐熱容器に、無調整豆乳600ミリリットル、自作のにがり大さじ1杯を入れてかき混ぜ、ラップをして20分ほど蒸しただけです。
少しゆるめに仕上がりましたが、とてもおいしい寄せ豆腐でした!
本当に固まることが確認できました。