私は蝶が大好きで、バタフライガーデンを庭づくりの柱の一つにしています。
蝶が集まる庭を作るには、大きく二つのアプローチがあります。
- 成虫の食物である蜜源植物を植える
- 幼虫の食物である食草を植える
今回は、2の食草、特にアゲハチョウ科以外の食草についてです。
食草とは蝶が主に幼虫期に餌として食べる植物のことです。蝶の成虫が好きな蜜の多い花を植えれば蝶はやってきますが、庭に居ついてくれるようにするには、蝶が産卵し、孵化した幼虫が食べる植物を植える必要があります。
蝶は卵→幼虫→蛹→蝶と完全変態をする虫です。幼虫とはイモムシのことなので、イモムシが嫌いな人は、食草を植えるというアプローチは難しいかもしれません。しかし、蜜源植物よりも来訪が多く、うまくいけば自分の庭で蝶の一生がめぐるようになります。
蝶の幼虫は、種類によって食べる食草が決まっています。例えば、アゲハ(ナミアゲハ)はミカン、サンショウ、カラタチなど、柑橘類の葉だけを食べますし、キアゲハはパセリ、ニンジン、ミツバなど、セリ科の葉だけを食べます。
私が意識的に食草を植えている、アゲハチョウ科以外の蝶を少しご紹介します。
ツマグロヒョウモンを呼ぶには
ツマグロヒョウモンはタテハチョウ科のチョウで、漢字で書くと「褄黒豹紋」です。1980年代までは近畿地方以西でしか見られなかったのが、徐々に生息域が北上し、1990年代に東海地方でも見られるようになったそうです。そして、静岡県の私の庭でもよく見かけるようになりました!
幼虫はパンジーなどスミレ科の植物を食べます。
パンジーやビオラを育てている方、黒と赤のこんなイモムシを発見して、ぎゃー!とか言ってませんか!?
ツマグロヒョウモンの幼虫なので、駆除せずに大切に放置してあげてください。
ルリタテハを呼ぶには
ルリタテハはタテハチョウ科のチョウで、「瑠璃」の名前の通り、鮮やかな瑠璃色の帯模様が特徴です。生で見ると本当に美しい色合いです。
しかし、翅を閉じると、木の幹や落ち葉にそっくりの隠蔽色になり、突然地味な感じになります。このギャップがたまらないです。
幼虫はホトトギスやサルトリイバラなどを食べます。
スジグロシロチョウを呼ぶには
スジグロシロチョウはシロチョウ科のチョウで、モンシロチョウとよく似ていますが、翅に黒い筋があります。
幼虫はアブラナ科の植物を食べます。
モンキチョウを呼ぶには
モンキチョウはシロチョウ科のチョウで、キチョウに似ていますが、翅の中央に銀色の斑紋があります。
幼虫は、シロツメクサなど、マメ科の植物を食べます。
この他にも、庭には、カタバミを食べるヤマトシジミや、ギシギシを食べるベニシジミ、ススキを食べるセセリチョウの仲間など、いろいろな蝶がいます。
参考文献
バタフライガーデンの作り方についての本は日本ではほとんどありませんが、日本でおそらく唯一の、そして最高の本が、私が尊敬する昆虫写真家、海野和男さんの『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』と『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』です。
海野和男(2021)『蝶が来る庭ーバタフライガーデンのすすめ』草思社
どのような花を植えるとどのような蝶が来るか、春、初夏、夏、秋と、季節ごとに紹介されている図鑑式の本です。
各植物のページに、チョウを呼ぶ力を「集客力」として5段階の表示があって、とても便利で楽しい作りになっています。
どの写真も本当に美しく、蝶と花の写真集としても楽しめます。
幼虫の食草ではなく、蝶の吸蜜源植物である花の紹介が中心ですので、イモムシはちょっぴり苦手だけど庭にたくさん蝶を呼びたいという方にも最高の本だと思います。
海野和男(1999)『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』農文協
蝶の一生、蝶の種類、蜜源植物、食草など、とてもわかりやすいのに非常に細かい話まで載っています。植栽プランも紹介されていて、都会のベランダから広大な庭まで、自分の環境に合ったバタフライガーデン作りを模索できます。
森上信夫・林将之(2007)『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版
最終更新日 2021年4月21日