今回の庭ノートは、静岡市駿河区にある「ふじのくに地球環境史ミュージアム(Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka)」についてです。地球環境史(人と自然の関係の歴史)から未来の豊かさとは何かを考えるミュージアムです。
2017年3月5日の庭ノートの記事で、企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」を紹介しましたが、このミュージアムは常設展もとても興味深いです。
最近静岡県で増えているチョウについて。企画展「静岡のチョウ 世界のチョウ」
展示物のボリュームはそんなに多くありませんが、どれもはっとさせられる切り口です。解説文やラベルは控えめになっていて、標本や資料をじっくり見て、考えることを楽しむミュージアムになっています。
私が気に入ったのは「骨の教室」です。脊椎動物たちの教室なのですが、この座席表、すごい生徒です。
着席している様子がシュールすぎます。ヒトも動物であることを思い知らされます。
廃校になった県立高校をリノベーションした博物館なので、外観は学校そのまま、内観も学校風味です。
静岡県の海を紹介している展示室には、チリメンモンスターの標本もあります。
チリメンモンスターとは、イワシの稚魚の加工物である「しらす干し」や「ちりめんじゃこ」の中に混入した海洋生物のことです。混入した海洋生物を探す活動は昔から行われていましたが、「きしわだ自然友の会のメンバー」がこれを「チリメンモンスター(チリモン)」と命名したそうです。ポケモンみたいに熱狂的なファンがいます。
疲れたら、図鑑カフェで休憩できます。自然史や地球環境史にまつわる図鑑があり、お茶を飲みながら図鑑を読むことができます。
展示の最後には、環境リスクを知り、そのうえで、豊かな暮らしとは何かを考えるコーナーがあります。
その中に、こんな問題提起がありました。
「どこに住めば豊かに暮らせる?」
「細長い国土を持つ日本は、地域ごとに特色ある地形と四季が育む豊かな自然があります。一方、人口が集中する都会は、豊富な情報や整備された環境があります。豊かに暮らすにはどちらに住むのが良いのでしょうか?」
田舎と都会、どちらにもそれぞれのよさがあり、私はどちらの恩恵も享受したいです。個人的には、田舎と都会の間に住めば豊かに暮らせるのではないかと思っています。私のこのホームページのテーマも、「富士山麓の静岡県富士宮市を拠点に、田舎と都会の間で自然との接点をさがす」です。
静岡県は、標高3000メートルを超える日本一高い山・富士山と、水深2400メートル以上の日本一深い湾・駿河湾を有しています。この高低差が多種多様な自然環境を生み出しています。自然資源が豊富で、四季の移り変わりを肌で感じることができ、環境と調和のとれた生活をすぐ実践に移すことができます。
※ちなみに、日本一高低差の大きい市は、静岡県富士宮市で、その高低差は3741メートルです。
一方で、新幹線で一時間の場所に、中途半端な都会ではなく世界有数の都市である東京があり、質の高い文化や情報を享受できます。さらにそこから世界中の街へ行くことができます。
自然災害のリスクはありますが、それは日本中世界中、どこにいても起こり得ることです。
というわけで、田舎と都会の間の静岡県は、バランスがとれていて、豊かに暮らすにはなかなかおすすめな場所です。また、静岡県は民力や気候の面でも平均的な日本の像に最も近い県とされていて、そのような意味でも住みやすいのではないかと思います。
しかし、だれもがさまざまな事情を抱えていて、どこに住むかを選べる人は少ないのではないかと思います。今住んでいる場所での生活を、どのように自然と調和のとれたものに変えていくか、豊かと思えるものに変えていくか、ということが重要になってくるのでしょうか。
おすすめの本
日下部 敬之, きしわだ自然資料館, きしわだ自然友の会(2009)『チリメンモンスターをさがせ!』 偕成社.
ちりめんじゃこの写真からチリモンをさがす、子ども向けの本ですが、大人も楽しめます。ちりめんじゃこを食べるとき、タコやイカの赤ちゃんをさがしたことを思い出します。海洋生物の多様性を知るための楽しい導入になります。