今回の庭ノートは、スイスのジュネーブからです。ジュネーブの植物園(Les conservatoire et jardin botaniques de la Ville de Genève)の中にある、「香りと感触の庭(Le jardin des senteurs et du toucher)」についてです。
ジュネーブはスイスの西部、レマン湖の南西岸にある都市で、フランス語圏に属し、国連ヨーロッパ本部、国際赤十字など、さまざまな国際機関が置かれている街です。
ジュネーブの植物園は、国連ヨーロッパ本部の隣にあります。とても学術的な植物園で、植物好きにはたまらない空間です。テーマ別にいくつかのエリアに分かれていて、レトロなメリーゴーラウンドがあったり、小動物がいたりして、遊んだりくつろいだりできる庭にもなっています。
植物園の北東の端に「香りと感触の庭(Le jardin des senteurs et du toucher)」があります。嗅覚と触覚で楽しむ庭です。もっと適切な日本語訳があるかもしれませんが、日本語での通称が見つからなかったので、とりあえず私は「香りと感触の庭」と呼んでいます。
「香りと感触の庭(Le jardin des senteurs et du toucher)」は、下の写真の道をまっすぐ歩いていった突き当たり右手です。
とても静かでおだやかな庭です。
ここでは、植物の香りを嗅いだり、触って感触を確かめたりすることができ、視覚障害者、体の不自由な方、子どもたちも、楽しんだり学んだりすることができます。
視覚障害者が庭の全体像を把握するための触図や、点字の説明もあります。
花壇は石とコンクリートで作られていて、地面よりも数十センチ高くなっています。花壇のへりに奥行きがあるので、ここに腰掛けて植物に触れたり香りを嗅いだりすることができます。
4月上旬のこの時期にあった植物の中で、一番感触がよかたのは、ラムズイヤー(Stachys byzantina)です。ラムズイヤーは英語で「子羊の耳」という意味です。その名の通り、ふわふわでなめらかで、私の個人的な感覚になりますが、ウール特有のヌメリ感まであります。
そして4月上旬のこの時期、一番存在感があったのは、ヤマブキ(Kerria japonica)です。そんなに香りは強くないのですが、ほのかにバラの香りといいますか、バラ科を思わせる香りがします。
日本原産の花が美しく咲いていてうれしく思いました。私の庭にあるヤマブキは八重ではなく一重で、花が咲くのはもう少し遅い時期です。「花はヨーロッパに行くとみんな八重になって縮れて帰ってくる」と知人が言っていたのを思い出しました。
目で楽しむだけという庭が多い中で、香りを嗅いだり、触って感触を楽しんだりできる庭は、だれにとってもうれしいものだと思います。
五感をフル活用する庭づくりを目指す私にとって、とても勉強になる庭でした。