うなり笛を作りました!これは、2万5000年以上の歴史を持つ、世界で最も古い楽器の一つです。石器時代に、薄い骨の破片にひもをくくりつけて、頭上でぐるぐる回して音を作り出したのが最初だそうです。
メロディーやリズムは出ませんが、空中を回すスピードの変化によって、音の高さを変えることができます。
かつては宗教儀式の道具として使われ、風、雷、神、魂、祖先の叫び、といった音に見立てられていたようですが、今日ではおもちゃとして文明社会の中に存続しています。
この音は、虎落笛(もがりぶえ)や、電線などの細い棒に強い風が当たるときに出る音と同じ、エオルス音(aeolian sound)ということになるでしょうか。
虎落笛は、日本に古くからある言葉で、冬の季節風が柵や竹垣の狭いすき間を吹き抜ける時にヒューヒューとなる現象のことです。木枯らしが吹いて電線がなるのも同じ原理で、電線の風下にできる「カルマンの渦」とよばれる渦巻群が電線の振動を促し、「ヒューヒュー」という音をおこします。
ちなみに、エオルス音(aeolian sound)は古代ギリシアの風神アイオロス(Aeolus)にちなんで命名されたそうです。
この種の楽器では、オセアニアの伝統楽器である「うなり木」が有名ですが、日本にも同じ方法で音を出すおもちゃがあります。昔、縁日などで売られていた「鳥笛」で、手のひらに入るくらいのブリキ製の筒の側面に、細いスリット状の風切り穴をあけただけのシンプルな構造です。ひもをつけて回すと、ピッピッ~、ピューンピューン~となります。
このタイプのうなり笛を作ろうと思い、まず、その辺にあったプラスチックの容器で試作品を作ってみました。直径30mm×長さ50mmくらいのプラスチックの容器に3mm×40mmのスリットを入れて、ひもをつけました。
ひもを持って回すとこんな音がします。
次に、その辺にあった金属で作ってみました。薄い銅の板をハサミで切って丸め、ハンダ付けしたものです。直径20mm×長さ50mmの筒で、3mmのスリットを入れて、ひもをつけてあります。
ひもを持って回すとこんな音がします。
宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に「蟲笛」という笛が出てきます。主人公のナウシカが持っている、蟲を制御するための道具です。蟲笛は気流に当てると音を発し、蟲の怒りを鎮めることができます。ナウシカは、怒りに我を忘れた腐海最大の蟲「王蟲」を、蟲笛を使って森へ帰します。この蟲笛も、うなり笛の一種だと思われます。
私の庭には王蟲はいませんが、我が家は田舎にあり、家屋も庭に囲まれているため、家の中によく虫が入り込むことがあります。クモやムカデやダンゴ虫などです。彼らは益虫なので、殺すわけにはいきません。そこで、家に迷い込んで我を忘れたダンゴ虫を蟲笛を使って静め、森へ帰すことにしました。
「ダンゴ虫!! 森へお帰り ここはおまえの住む世界じゃないのよ」
蟲笛が効いたかは謎ですが、ダンゴ虫は森へ帰りました。
おすすめの本
宮崎駿『 風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット』徳間書店
『風の谷のナウシカ』の原作漫画です。アニメーション映画しか見ていない方はぜひ読んでください!ストーリーが全く違います。話がもっと複雑でディープで大人向けです。全7巻ですが、第7巻が圧巻です。
豪華装丁本の2巻セットの方は、とても重厚感があり、古文書のように机の上に置いて姿勢を正して一ページずつ丁寧にめくって読む感じです。
坂根巌夫(1986)『新・遊びの博物誌〈1〉』朝日文庫
「アノモルフォーシス」「天上の音楽」「逆立ちからくり」「聴く時計」など、古今東西の芸術家や科学者たちの自由な発想が生んだ、愉快な遊びの数々を紹介した本です。「うなりの音具」についても載っています。この『遊びの博物誌』シリーズはロングセラーで、Kindle版も出ています!
皆川達夫 監修(1998)『楽器 歴史・形・奏法・構造』マール社
楽器事典です。古代から現代まで、世界各地のあらゆる楽器を網羅しています。写真ではなく図版で解説されているので、読んでいて疲れないです。機能・構造・特性・奏法・合奏形態がすべてわかる、楽器好きにとっては眺めているだけで楽しい本です。うなり木についても載っています。